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2020全日本EVグランプリシリーズ第4戦レポート③ EVレースを盛りあげるのは、やっぱり熱いレース魂なのである!

2020年8月25日更新



目指すは3年連続の年間チャンピオン

いろんな意味で熱いレースが終わった直後、エアコンがしっかりと効いたサーキットの管制塔内の一室で表彰式が行われた。

全クラス総合の部で表彰された3選手の順位とトータルタイムは、改めて紹介すると以下のとおりである。

1位 #1 EV-1 地頭所光(TAISAN 東大 UP TESLA3 / Team TAISAN東大)27Lap 30'37.121

2位 #33 EV-1 TAKAさん(適当LifeアトリエModel3 / スエヒロRC)27Lap 30'46.102

3位 #88 EV-2 レーサー鹿島(東洋電産・LEAFe+ / 東洋電産株式会社)25Lap 31'52.051

2位のTAKAさん選手(向かって左)、1位の地頭所光選手(中央)、3位のレーサー鹿島選手



優勝した地頭所光選手は、普段は東京大学大学院生ならではの知性を感じさせる言動をするヒト。だが、このときのコメントは内容もトーンもかなり攻めたものとなっていた。

「4連勝を決めることができて嬉しいです。ここまできたなら、大人の対応とかせずに全勝をして、今年を締めくくりたいと思います!」

今シーズン、地頭所選手は一昨年からの3年連続の年間チャンピオン獲得のプレッシャーの中で戦っている。コメントではそのことをはっきり口にはしなかったものの、残りのレースすべてに勝つ、すなわち3年連続チャンピオンを目指すことを雄々しく宣言したのである。

次戦から新たなEVが続々参戦!?

表彰式の後、JEVRAの富沢事務局長に地頭所選手の年間チャンピオンの可能性を含め、今後のEVグランプリシリーズの見どころについて聞いてみた。

——地頭所選手は7戦中で4勝。ほぼ年間チャンピオンは間違いなさそうな感じですね。

「ええ、今回の優勝でその確率はかなり高まりました。ただ、レースの規定で全7戦中6戦に参戦しないとチャンピオンになる資格が得られないし、残り3戦で総合のドライバーズポイント2位につけているTAKAさんが続けて優勝をして地頭所選手が何度かリタイアでもすればどんでん返しもあり得るわけだから、まだ間違いないとまでは言い切れません。年間チャンピオンの行方は秋以降のお楽しみ、ですね」

——どちらがチャンピオンになるにせよ、テスラモデル3勢は圧倒的に強い。今シーズンから来シーズンにかけては、ずうっとこうしたレース展開が続くんでしょうか?

「うーん、しばらく続くかも知れませんが、ずうっとではないでしょう。なぜなら、今年秋から来年にかけてポルシェタイカンやアウディe-TRON、BMW i4などのヨーロッパのスポーティな新型EVが続々登場してくるわけで、それらを駆るチームが出てくればまた違ったレース展開となる可能性は大いにありますから……。実は、直近では9月12日に行われる袖ヶ浦フォレストレースウェイでの第5戦で、ジャガーのi-Paceが走ることが決まっている。これがモデル3にどこまで迫れるか、けっこうな見どころになると思いますよ」

——なるほど、今後、各メーカーが発売する高性能EVをマシンとするチームが次々と出てくれば、レース展開と見どころはどんどん変わっていくということですね。

「そうです。それでわれわれとしてはメーカーそのものが最新のEVをひっさげてチームとして参戦してくれれば、さらにレースのレベルが上がり、面白味も増すだろうと思っている。これ、なかなか実現しませんけど、レースをEV開発の実験場と考えて、恐れずひるまず積極果敢に参戦してくれるようになることを願っています」

― そうなれば、本格的に盛り上がりそう……ただ、もし、そうなったとしたら、例えば今回のレースで奮闘を見せたコンバートEVのミラとかの居場所がなくなる恐れはないですか?

「いや、それはないです。われわれは多種多様なEVにレースに参戦いただき、それでEV界を活性化させていくことを目指している。だからクラス別のレースとし、さまざまなタイプのEVが参戦できる状態を維持し続けている。これからもその体制に変わりはありません。そもそも、今回ご覧いただいてわかるようにミラはテスラモデルSとリーフe+を抜いて総合3位になる寸前までいった実力車。ああいう魅力的なマシンがずっと参戦し続けてくれないと、逆にレースを盛りあげる立場であるわれわれのほうが困ります(笑)」

EVにミッションで戦闘力アップ

ということで、最後にコンバートEVであるミラを走らせていたチームのことを紹介しておきたい。

擁するマシンの名前は「ウェルマー☆ビルズ☆EVミラ」とカワイイ感じなのだが、チームの面々はみんなおじさんである。ただし、このおじさんたち、どれも只者ではなかったりする。



写真中央は、チーム代表の繁原秀孝さん。高精度な歯車部品づくりをすることで知られている繁原製作所(大阪府東大阪市)という会社の会長で、今回出場したEVミラに自社オリジナルの減速機を装着するなどして驚異の速さを実現させている。

写真の向かって右は、VCU(Vehicle Control Unit)担当の山田知徳さん。Yamada Power Unitという会社(兵庫県姫路市)の代表で、高度なコンピューティングの側面からマシンの戦闘力を高めている。

写真の向かって左は、ドライバー担当の飯倉雅彦さん。本人は「素人ドライバー」と謙遜するが、実はYAMAHA(静岡県磐田市)の現役社員で、かつてはF1マシンのエンジン設計をやっていたほどのレース玄人だったりする。

みんな、EVレースにかける思いは熱い。中でも繁原代表の熱さは特別だ。

「このミラ、135kWという比較的大きなモーターを積んでいるんですけど、バッテリーは32kWhとかなり小さ目です。ただ、車体が軽いし、低速と高速の2速切り替えの減速機=ミッションを付けて効率的なトルク調整ができるようにしているので、テスラモデルSやリーフe+にも劣らない速さが実現できています」

「普通、EVにミッションは付けません。でも、発想を転換してあえて付ければ、ものすごくパフォーマンスが上がるという側面がある。われわれは、その効果を証明したいと思ってこのレースに出場しているんです。そう、ウサギとカメの話でいうなら、小さな手作りEVもミッションを付ければ、ウサギにはなられへんけど、勝てるカメにはなれますよ、ということです(笑)」



「いま、全日本EVグランプリシリーズにはほとんどのチームが市販の高性能EVをベースとしたマシンで出場しています。まあ、自作すると何千万円もかかるのでそれはそれで仕方ないんですけど、本来、レースの面白味や醍醐味は自分たちの手でつくったマシンを速く走らせるところにあるわけで、その原点を完全に忘れ去ってもらっては困ります。そのことを思い出してもらうためにも、これからどんどん彼らを打ち負かすシーンをつくっていきたいですね」

全日本EVグランプリシリーズの門戸は広い。熱いレーシングスピリットがあるチームは、ぜひ参戦にチャレンジを。そんなチームのマシンがいっぱい走るようになれば、われわれ観る側にとっても楽しみがいや増す!



①真夏のEVレースは、ずっとアクセル全開だと勝てないのだ!

②テスラモデル3の強さが際立つなか、驚きのバトルも目撃できたぞ!

③EVレースを盛りあげるのは、やっぱり熱いレース魂なのである!

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