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2020全日本EVグランプリシリーズ第4戦レポート① 真夏のEVレースは、ずっとアクセル全開だと勝てないのだ!

2020年8月25日更新



バッテリー温度を気遣う
アクセルワークが不可欠

長い梅雨が明けた1週間後の8月9日、全日本EVグランプリシリーズ(ALL JAPAN EV-GP)の第4戦が快晴の筑波サーキットで開催された。

気温は予選が行われる午前中で34℃。決勝がある午後には36℃にまでに上昇した。



ここまで暑くなると、EVマシンを駆るドライバーはたいへんだ。レース中盤あたりから、アクセルが思いっきり踏めなくなるという弊害がでてくる。

EVの駆動用バッテリーは、サーキットのようなところでアクセル全開のまま走り続けるとかなり高温となり、それによって性能が劣化する恐れがある。そのためクルマのコンピュータは、限界温度に達するとアクセルを踏んでも一定以上のスピードがでないよう指令をだす。速く走らなければならないレースにおいて、これはなかなかに辛い事態となるのである。

昨年までテスラモデルSで2年連続の年間チャンピオンを獲得し、今シーズンはテスラモデル3を駆って開幕から3戦連続で勝利している東京大学大学院生の地頭所光選手(Team TAISAN 東大)は、レース前にこう語っている。

「クルマにはラジエーターを冷やすための冷たい水を入れたポンプを積んでいるんですが、つい先日、この筑波で気温が高いときにテスト走行したところ、たった3周を全開走行しただけでバッテリーの温度が上がってスピードがでなくなってしまった。今日、ここまで暑いと、しっかりペース配分を考えたアクセルワークをしないと、4連勝は厳しくなるかも知れないですね」



今シーズン、初参戦ながらも同じくテスラモデル3を駆って3戦連続で2位の好成績を残している選手TAKAさん(スエヒロRC)も同じようなことを言っている。

「EVレースって、バッテリーの温度のことを考えて、エコドライブを頑張ってやりながら、どれだけヒトよりいいタイムで走れるかっていう矛盾したことをやらなきゃいけないレース。今日みたいに気温が高いと、それがもっと求められるので、ブイブイやるのが好きな僕にとってはもう修行という感じになる(笑)。チャンピン地頭所くんに勝つためには、それに耐えて、頭をクールに保って運転できるかどうかがキモになるでしょうね」



なお、TAKAさんはEVが好きというよりはテスラ車の走りが好きでこのレースに参戦しているヒト。YouTube上では「TAKAさん/テスラCh」を開設してレースのことも含めたテスラ車情報を頻繁に流している。TAKAさんならびにテスラ車に興味のある方はぜひチェックしてもらいたい。

2台のテスラモデル3が
ぶっちぎりのフロントロー

さて、決勝のスターティンググリッドを決める予選だが、これは午前10時30分に始まったと思ったら、あっという間に終わってしまった。

出場する9台のマシンが、午後の決勝に向けてバッテリーをあまり熱さないよう、それぞれわずか2~4周でタイムアタックを終えたからだ。

その予選の結果は以下のとおりである。

◎2020全日本EVグランプリシリーズ第4戦 予選結果 POS No Class Name (Carname / Team) Time

1位 #1 EV-1 地頭所光(TAISAN 東大 UP TESLA3 / Team TAISAN 東大)1'03.138



2位 #33 EV-1 TAKAさん(適当LifeアトリエModel3 / スエヒロRC)1'03.422



3位 #88 EV-2 レーサー鹿島(東洋電産・LEAFe+ / 東洋電産株式会社)1'11.403



4位 #0 EV-1 千葉栄二(TAISAN UP TESLA S / Team TAISAN)1'13.324



5位 #28 EV-C 飯倉雅彦(ウェルマー☆ビルズ☆EVミラ / ウェルマー株式会社)1'13.686



6位 #55 EV-R 廣瀬多喜雄(ノートe-Power NismoS / OIRAKU RACING)1'18.226



7位 #19 EV-R 藤田広一(9thチャレンジ ノートe-POWER / ロンリーレーシング)1'22.001



8位 #3 EV-R 廣瀬浩明(WHITE-NOTE)1'22.014



9位 #7 EV-2 国沢光宏(ブルースイッチ@リーフe+ / KUNISAWA.NET)1'23.269



1位から9位までのタイムが大幅に開いているのは、基本的にマシンのパワーや性能に大きな差があるからだ。

この大会では出場するマシンのモーター出力の大きさや仕様ごとにクラス分けがされており、クラス別で順位が決められる。しかし、レースそのものは全クラス混走のカタチで行われ、その中で総合順位が決まるようにもなっている。目に明かな優劣は、だから予選でも決勝でも当然のようにでてくるのである。

◎2020全日本EVグランプリシリーズの参戦車両のクラス分け
EV-1(市販車クラス:モーター最大出力201kW以上)
EV-2(市販車クラス:モーター最大出力151kW以上201kW未満)
EV-3(市販車クラス:モーター最大出力101kW以上151kW未満))
EV-4(市販車クラス:モーター最大出力101kW未満)
EV-C(コンバートクラス:エンジンをモーターに換装した車両)
EV-P(プロトタイプ・クラス:開発車両/レース専用車両)
EV-F(市販車クラス:FCV=燃料電池車クラス)
EV-R(市販車クラス:レンジエクステンダー/発電をエンジンで行う車両)

ただし、EVレースの場合は、パワーだけでなくバッテリーの熱マネジメントの如何などが勝負を決するところがある。そのため、決勝では下のクラスのマシンが上のクラスのマシンを打ち負かすことも往々にしてあり、そこが格別な面白味ともなっている。

全日本EVグランプリシリーズの主催者であるJEVRA(日本電気自動車レース協会)の富沢久哉事務局長は言う。

「予選で1位と2位になったテスラモデル3には他を寄せ付けない圧倒的な走行性能があるので、決勝でもワンツーフィニッシュを決める可能性は極めて高いでしょう。とはいえ、これだけ暑い中で長くデッドヒートを繰り広げると終盤でどちらかがバッテリーを熱してしまって順位を落とす可能性がなくもない。そうなると冷却がかなりうまくいっているゼッケン88番のリーフe+あたりがクラスが下であるにもかかわらず、2位以内に食い込むことだって十分に考えられる……。今日の決勝は、そこらへんに注目するとかなり楽しめると思いますよ」

「あと、ゼッケン28番のミラのコンバートEV(EV-Cクラス)の走りからも目が離せません。予選で、ストレートの最高スピードが約180㎞/hと、上位のマシンに肉薄する速さを見せつけた。これが決勝でも続けば表彰台もあり得るかも。競馬でいうところの大穴の一台ですね(笑)」

 



①真夏のEVレースは、ずっとアクセル全開だと勝てないのだ!

②テスラモデル3の強さが際立つなか、驚きのバトルも目撃できたぞ!

③EVレースを盛りあげるのは、やっぱり熱いレース魂なのである!

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