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EVキーマンに聞く/カーライフ・ジャーナリスト まるも亜希子 ① 「生きているうちにEV時代がくるなんて夢にも思っていませんでした」

2019年12月3日更新



女性そして母の視点で豊かなカーライフの在り方を提言し続けている自動車ジャーナリストのまるも亜希子さんに、EV(電気自動車)とPHV・PHEV(プラグインハイブリッド車)などの電動車について、その特長や魅力を分かりやすく語ってもらった。5回シリーズでお届けする第1回目は、「元は熱烈なエンジン車派だった自分がEVシンパになるまでの数奇な運命」について!?

20年以上前に大御所が語った
EV時代到来の予言にポカーン

――まるもさんが、初めてEVを意識したのはいつごろのことですか?

何しろ大学に入るまではまったくクルマに興味がなかったので、ほとんど意識していませんでした。就職活動で、本当はファッション誌の編集者になりたかったのですが、なにを間違ったか自動車雑誌『Tipo』の編集部に入ってしまいまして(笑)。それが1996年なので、仕事をするようになってからですね。

――開発中のEVを取材したとか?

いえ、そうじゃないんです。当時、雑誌に連載をもっていた自動車ジャーナリストの舘内端さん(現・日本EVクラブ代表)がよく編集部にいらしてたんですけど、あるとき、その打ち合わせの席に私がお茶を運んでいったところ、いきなり舘内さんにこう言われたんです。「あなた、新人さんだよね。これからはEVの時代になるから、EVのことをしっかり勉強しなさいよ」って。私、とっさには話が理解できなくて、「???」って感じで……ポカーンとなっちゃったんですが、それが人生で初めてEVのことを強く意識した瞬間でしたね(笑)。

――96年というと、まだハイブリッド車のプリウスも登場していない頃です(プリウスは97年12月発売)。

そう、あのころは馬力が大きくて、とてつもないトップスピードがでる大排気量のエンジンのクルマがステータスシンボルになっていて、EVなんて影も形もない時代でした。私自身、大学生のときから70年代のVWビートルやフィアット124スパイダーなど、個性的なエンジン車ばっかり乗り継いでいたし、仕事でもフェラーリなどに試乗してワクワクしっぱなしの状態でした。
そんな中、自動車ジャーナリストの大御所たる人が「これからはEVの時代」だなんて突拍子もないことを言い出して……正直、実感できなかったし、まったく信じられなかったんですよね、そんな時代がくるなんてことが。

――しかし、いまや世界的にクルマのEV化の流れが急です。

舘内さんは、20年以上も前にこの動きを予見してたってことですよ。すごいですよねぇ。自分の不明さを恥じるとともに、そんな舘内さんをはげしく尊敬したいと思います(笑)。

初体験のコンバートEVでは
ほのぼのタイムが満喫できた

――そんなEV懐疑派だったまるもさんがEVを初体験したときのことを教えてください。

実は、これも舘内さん絡みなんですよね。1997年に舘内さんが代表を務める日本EVクラブがケーターハム・スーパーセヴンを改造したコンバートEVで日本一周するってことになり、編集部の人間が助っ人ドライバーとして借りだされたんですが、私は秋田県縦断のときにドライバーを務めることになり、それがEV乗車の初体験になったんです。



――乗った感触はどうでした?

うーん、それがあまり芳しくなかったんです。積んでいたのがリチウムイオンバッテリーじゃなくて、昔ながらの鉛の電池だったので、スピードは出ないわ、航続距離は極端に短いわで、雨が降ったら「感電しないように気をつけろ」なんて脅されるわで、もう走るのが大変でした。秋田県を縦断するのに二泊三日もかかっちゃいましたからね(苦笑)。

――ああ、第一印象はあまりよくなかったわけですね。

そう、走りに関してはイマイチでしたね。「これじゃあ、EVの時代なんてまだまだだな」って改めて思ったりしたものです。ただですね、一つだけ「いいな」って思ったところもあったんですよ。

――それは何でしょう?

この旅では、一般のご家庭に突然お邪魔して、「充電のためにコンセントを貸してください」ってテレビ番組みたいなことをしょっちゅうやっていたんですけど……、最初は怪訝な顔をする皆さんが、「EVで日本一周をしている」という事情を話すとすごく面白がって積極的に協力してくれました。しかも、ときには充電が終わるまでお茶やお菓子を振る舞ってもらい、その家の縁側でほのぼのとした談笑タイムを過ごしたりもしました。
それで私、「EVって、どこの家にでもある電気という身近なエネルギーで走るから、人と人をつなげるチカラがあるんだなぁ」ってしみじみ思い、そういうところにすごく好感をもったんです。

――なるほど、シーンはまったく異なりますが、近年の災害時には、EVが停電した家や施設まで電気を運んで給電することもありました。そのときも、EVが人と人をつないだわけですが、その原点を体験されたわけですね。

まあ、当時はそこまでちゃんと理解できていたわけではありません。でも、電気で動くクルマの魅力の一端が、ボンヤリながら見えたような気がしました。

EV時代の夜明けを実感した
三菱アイ・ミーブの公道試乗

――では、まるもさんがEVの走りに好感をもちだしたのはいつ、どんなクルマで、だったのでしょうか?

それはもう、21世紀になったあたりから各自動車メーカーがリチウムイオンバッテリーと最新のモーターを積んだEVを積極的に開発し始めて、その試作車に仕事で試乗するようになってからです。それでようやく「あ、EVの走りっていいかも」って思えるようになりました。

――とくに大きな感動を覚えたEVは?

やっぱり、2009年に三菱自動車が世界で初めて一般販売したEVのi-MiEV(アイ・ミーブ)でしょう。なにしろ、ちゃんとしたバッテリーとモーターが載っているEVで、初めて公道を自由に走れるようになったんですから。
発進も、車線変更も、うねった道での走行もとにかくキビキビ行えて、「ああ、EVって、こんなにも快適な走りをするものなんだ」って心底感心させられました。当時はまだ航続距離がそこそこという難点はあったものの、これなら舘内さんが言っていた「これからはEVの時代だ」もあながち妄想……いや、夢物語じゃないかもって思えるようになりましたね(笑)。



今後10年間で価格もこなれ
日本のEV時代の幕が開く

――i-MiEVに続いて日産のリーフが出て、「ついにEV時代の幕開か」との期待が高まりましたが、その後しばらくは足踏み状態が続きました。ところが、近年、フォルクスワーゲンの燃費不正問題やパリ協定の枠組み合意や中国のNEV政策推進などがあり、現在は、世界レベルで急速にクルマのEV化が進んでいます。

はい、はい、ものすごい勢いですよね。

――ただですね、そんな中において、EV先進国だったはずの日本でのEV化ムーブメントはいま一つ進んでいない印象があります。まるもさんは、日本でのEVの時代はいつごろ本格的に到来すると見ていますか?

たぶんですけど、2020年から2030年にかけた10年の間に大きくEV化が進むんじゃないでしょうか。というのも、三菱自動車や日産以外の日本メーカーもEV開発に本腰を入れ始めていて、来年、再来年あたりからバッテリー性能がよくて航続距離が長いEVやPHV・PHEVがたくさん発売される気配が濃厚です。そして、国も2030年までにEVやPHV、PHEVなど電動車の販売割合を5割~7割にしようと積極的に動き始めています。
中国じゃないですけれど、メーカーと国の両輪が動きだしたら、もう、バーってEVの時代の幕が開いていく、そう思うんですよね。

――国は補助金などの施策を打つでしょうけれど、価格の高さが普及のネックになりませんか?

そうですね、EV、たしかに割高ですよね。でも、いろんなバリエーションのEVが出てくると、いずれその価格もこなれていくと思います。そうなったら普及もどんどん進んでいくはずです。クルマとしてはもう最高のレベルに近づいているんですから、あとはその変節点がいつ来るかだけ。それが、そんなに遠くない日であることは、ほぼ間違いないと思います。

①「生きているうちにEV時代がくるなんて夢にも思っていませんでした」

②「女性にとって“油がいらないEV”はとてもありがたい存在です」

③「EV/電動車で真に豊かなカーライフ、始めてみませんか?」

④「折りたたみ式ガルウイングとかのカッコいいEVの出現を希望します(笑)」

⑤「ロータス店さんがEV世代の子どもたちに大人気のお店になりますように」

まるも亜希子(まるもあきこ)
千葉県船橋市生まれ。大学卒業後に自動車専門誌編集部に6年間勤務し、2003年にカーライフ・ジャーナリストとして独立。2004年と2005年にサハラ砂漠ラリー参戦・完走、 2004年から2015年にハイブリッドカーの耐久レース参戦・完走。2013年にはプロジェクト「PWP(ピンクホイール・プロジェクト)」を立ち上げ、女性のパワーでクルマ社会を元気にする活動を開始。近年は母親の視点でファミリーのカーライフもサポート中。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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