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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2018年5月29日更新
中国はEV大国をめざしている
いま中国は、EV化路線をひた走っている。
近年は、「NEV(New Energy Vehicle=新エネルギー車)購入者への補助金給付」や、「ナンバープレート交付制限・走行規制の免除」といった施策を積極的に行うなどしてEV化を進めてきた。そして、2019年からは中国で年3万台以上のクルマを生産・輸入している自動車メーカーに対してもNEV規制を発動し、その一定比率をNEVすなわちEV、PHV、FCVにすることを義務付けることにしている。
これら施策は、大義的には深刻な大気汚染をなくすためのものとされているが、じつは、エンジン車よりもつくりやすいといわれているEVを中心としたクルマを国内で製造できる態勢を整えていき、いずれは日米欧を凌駕した世界一の自動車大国になることをめざしているが故のものともいわれている。
その結果はどうなるかはわからない。だが、世界一の人口と号令一下の施策のかけ算によって、近い将来、中国が実質的にEV大国となるのは、まちがいないことといえそうだ。
『半沢直樹』のように
ワクワクできる物語
今回取り上げる『小説EV戦争』は、こうした急速にEV大国化する現代中国を舞台にした小説である。
ざっくりいうと、双慶市という架空の都市で進められるEVタウン計画の仕事をどの企業あるいは団体が受注するかということを軸として展開するストーリー。そのなかに中国の役人同士の利権と権力争い、合併した日本の銀行の内紛、韓国の財閥企業のいざこざなどのドロドロとした話が、かなりリアルかつ克明に描き込まれており、いうなれば国際的な政治・経済小説といった趣きをたたえている。
とはいっても、そう難解な作品ではない。
主人公は優秀かつ正義感の強い魅力的な三人の女性たち。それぞれが周りの男性たちが画策する陰謀や裏切りなどと闘いながら、自らが理想と考えるEVタウン実現へと奔走するのだが、その様はまさに“勧善懲悪”然としていて、読んでいてワクワク、ドキドキが止まらない。
「偶発債務」とかの難しい専門用語が頻繁にでてきても、そうしたエンターテインメント性のなかでなんとなく理解できてしまったりする。ちょっと前に銀行員を主人公とするテレビドラマの『半沢直樹』が大ブームになったが、あれに近い物語ということができる。あれが楽しめたなら、きっとこの小説も問題なく楽しめる。
あまり身近ではない国際的な政治・経済小説だからといって、そして上下巻あわせて800ページ近くもあるからといって、読書を躊躇えば、爽快な楽しさを逃した後悔に苛まれること必至といえるのである。
EV競争とはすなわち
バッテリー競争である
作品中にでてくるEVに関する記述も相当に興味深い。
いや、それどころか、EVのことを知るうえでは、かなりいい勉強になるといっていい。専門書を読んでもよく理解できなかったことが、経済の専門用語と同様、物語の楽しさのなかにうまくまぶされ、すんなり理解を誘う。
たとえば、以下は、主人公のひとりである韓国の財閥企業パルスンの社員・林麗香が会長に対して自らの考えを述べている台詞とその解説なのだが、EVとはバッテリーが命だということがよくわかるうえに、そのバッテリーの品質および普及性の鍵は正極材が握っていることがしっかりと理解できる――
“「……EVの開発とは即ち、リチウムイオン電池の開発です。リチウムイオン電池は正極材、負極材、電解液、セパレーターから構成され、開発の鍵を握るのは正極材です。残念ながら基礎材料の研究ではパルスン電子は日本企業に大きくリードされていて、短期間では追いつけないとのことです」
「なんだ。追いつけないから諦めろと言っているのかね?」
「いえ、違います。日本企業が得意とする三元素系の正極材を使ったリチウムイオン電池が果たして中国市場に必要か、というアプローチで考えました。目指すはグローバルスタンダードです。高価な三元素を使わず、品質は劣るが価格は安いリン酸鉄系の正極材で勝負を挑めばよいのです……」
(中略)
EVが普及するにはリチウムイオン電池の品質が今よりも大幅に向上し、価格が劇的に下がる必要があるが、EVの最大の欠点といわれる航続距離の短さを克服するにはリチウムイオン電池の正極材がキーとなる(中略)。
パナソニックなど日本企業は三元素系で先行するが、高価なコバルトを使用するため、価格が高止まりするほか、ニッケルの埋蔵量も限られるという不安がある。
その点、リン酸鉄系は価格が安く安全性にも優れている。(中略)エネルギー容量が小さいため電池が巨大化するという致命的な欠点を補うことができれば、リン酸鉄系正極材は日本企業が先行する三元素系正極材を抜いて一気に世界標準となる可能性を秘めているのだ。”
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