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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2020年10月13日更新
機械に疎いヒトでも
EVのメカニズムが理解できる
この本は、電気自動車すなわちEVのことを歴史、種類、部品、充電システムごとに概説してくれている。
いわばEVの教科書。読めば、これまで何となくしか理解していなかったEVのメカニズムのことがよくわかるようになるし、「へえ、そうだったんだ」という気付きがいっぱいもらえるようになっている。しかも、基礎的な内容なのだが、突っこむところはしっかりと突っこんでいる。
例えば、「EVとはどんなクルマ?」と問われると、だいたいのヒトは「バッテリーとモーターで走るクルマ」と答えるわけだが、この本を読み進めていくと「EVはバッテリーとモーター、それにインバーターで走るクルマ」と答えたほうがより適切だということが見えてくる。
以下は、その理解を促す記述の要約である(加筆あり)。
・モーターには直流モーターと交流モーターがある。
・EVのモーターは当初から近年に至るまで直流モーターが採用されてきた。
・その理由は、交流モーターは同じ出力を出すのに軽量小型化できる利点があるにしても、回転数を細かく制御するときに周波数の制御も行う必要があり、それがなかなかうまくいかなかったからだ。
・そのため交流モーターは、基本的に水汲みポンプや電気カミソリなどの回転数の変化が不要な機器に使われるものに限定されてきた。
・ところが、発達したIC技術を使ったインバーターが登場して周波数が自在に仕業できるようになると、がぜん交流モーターが動力源として注目されだした。
・最初は鉄道用として使われだし、その応用で電動のクルマにも使用が広がった。
・いまや、市販のEVのモーターのほぼ100%がこの交流モーター。そこにはインバーターが不可欠なものとして搭載されている――。
CO₂の排出ゼロが必要なのは
クリーンが目的ではない
さらにこの本は、EVに関して持ちがちな誤解の是正もしてくれる。
われわれはよく「EVはCO₂を排出しないからクリーンなクルマ」という言い方をするが、これは厳密にいうと間違った表現となるらしい。
どうしてか?
以下は、それに関する記述の要約である(加筆あり)。
・自動車の排ガスで問題になるのは、ガソリンエンジンならCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、NOx(窒素酸化物)で、ディーゼルエンジンならPM(粒子状物質:スス)、NOxが主なところである。
・現在、これらは有害な成分として世界中で排出量が厳しく制限されるようになっている。
・しかし、CO₂はこれらと同列ではない。なぜなら人間も酸素(空気)を吸ってCO₂を吐き出すなどしており、決して有毒とは言えないからだ。
・CO₂排出ゼロはクリーンを目指すためということではなく、温暖化を食い止めるためなのである(そこを取り違えてはいけない)。
この本は、ことほどさように専門的なことをとても平易に解説してくれながら、われわれの大ざっぱすぎる理解を少し深めてくれ、かつ正しい方向へと導いてくれる。これからのEV時代を生きていくためには必読の書といっても過言ではないのである。
260万円のEVが出る前に
EVの基礎を学んでおこう
ところで最近、欧州のメーカー勢のEV発売ラッシュの中、ホンダ初のEVであるHONDA-eが発売されたり、日産の新しいEVのアリアが発表されたりと、久々に国産EV関連のニュースが続いている。
ついにEV時代の本格化か、という感じになってきているわけだが、コロナ禍で消費が冷え込んでいるのに加えて、価格が高いという事実もあり、世間はいまいち盛り上がりに欠けている。逆に「まだまだEV時代の本格化とはいえないよ」という声が聞こえてくるほどだ。
となると、この本も必読とするには時期尚早と見られる可能性がなくもないわけだが……。
皆さんは9月22日にテスラのイーロン・マスクCEOが、3年後をメドに2万5000ドル(約260万円)の新型車を発売する意思があることを表明したのはご存じだろか。
「えっ、マジ?」と驚くような内容。でも、これまでのテスラの革命的な動きの数々を振り返ると、決して“ふかし”ではないような感じが強くしてくる。
はたして結果はどうなのか?
確かなことは言えないにしても、本当にそうなるのだとすれば、EVはいきなりクルマ市場のど真ん中にくるはずだ。そして、他メーカーも廉価なEVの開発・発売に懸命となるに違いない。たぶん、それは価格面からくるEV時代の本格化の真の夜明けということになるだろう(性能面では既にガソリンエンジン車と対抗し得るポテンシャルを持ちつつあるので)。
3年後なんてすぐだ。今のうちからこの本でEVの基礎をしっかり学んでおいて決してソンはないと思う。(文:みらいのくるま取材班)
『電気自動車メカニズムの基礎知識』
・2019年9月13日発行
・著者:飯塚昭三
・発行:日刊工業新聞社
・価格:2,200円+税
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