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クルマのトラブル「もしも」マニュアル

Vol.38 豪雪で立ち往生して命の危機に。どうすれば助かる?(前編)

2019年1月29日更新

豪雪ガス欠_1web

【今回のやっちゃったストーリー】

IT関連の仕事をしているIさん(33歳・独身・会社員)。年末年始はほぼ休みなしの大忙しで、ポカッとまとまった休みが取れたのは2月に入ってからのことだった。
Iさん、いつもの休みどおりにアウトドアでアクティブに遊ぶことも考えたが、今回ばかりは温泉でゆっくり過ごすことにした。
「とにかく骨休みしなくちゃな」。
休みの初日の朝、Iさんは愛車のSUV(エンジン車)で日本海側の山奥にある鄙びた温泉を目指して高速道路を北上した。暖冬気味で雪はまったく降ってはいなかったが、一応、スタッドレスタイヤを履いていた。天気予報で、午後から温泉がある山間部は大雪になる可能性が高いということを聞いていたからだ。
予報は当たった。高速道路を降りたときから雪が降りはじめ、山間部の県道に入るときには、前がよく見えないほどに激しい降雪となっていた。平日のせいか先行するクルマは1台もなく、そんな中を独り雪の山道を走ることに微かな不安を感じたものの、よくいくスキー場の雪道に慣れていたIさんは「スピードを落として走ればなんとかなるだろう」と考え、とりあえずシフトレバーをローポジションに入れた状態で前へと進むことを決めた。
が、標高が高くなっていくにつれ雪は激しさを増していった。のろのろと1時間あまり走ったあたりの道路は数十センチもの新雪に埋もれていて、どこが道でどこが崖だかわからなくなっていた。しかもその雪はベタ雪で重く、これ以上チェーンを巻かずに走り続けるのは不可能と思われた。すなわちチェーンをクルマに積んでいなかったIさんは、その瞬間に前進も後退もままならならないことを悟ったのだった。
Iさん、すぐにクルマを停め、スマートフォンで電話してロードサービスに助けを求めた。すると、快くレスキューを承諾してもらえたのだが、「ちょっとした降雪ならば、そこには40~50分ほどで駆けつけられます。しかし、この雪ですから、いつ到着できるかはっきりとはいえません。どうかクルマのエンジンをかけてヒーターを効かせたままでしばらくお待ちください。あ、そうそう、マフラーが雪に埋もれると一酸化炭素が車内にまわって死亡する恐れがあるので、ときどきマフラー周りを除雪することもお忘れなく」との恐ろしい通告&警告がなされた。
とりあえず、ヒーターを効かせた状態で1時間ほど待った。その間、マフラー回りの除雪も手で2回やった。
それでもまだロードサービスはやって来なかった。焦れて電話したところ「すみません、あまりの豪雪で県道の入口あたりから進めない状態です。そちらから警察か消防に連絡して救援を要請してください。とにかく、暖かくしたまま車内で待機していてください。間違っても徒歩で下山しようなどとは考えないように。そんなことをすると凍死することになりますから」と絶望的な返事しかもらえなかった。
ふとガソリンメーターに目をやると、もう残りはわずか。雪が音を立てて大量に降る夜にエンジンが切れ、ヒーターが切れてしまえば、それはすなわち凍死を意味する。Iさんは県道に入る前にガソリンを満タンにしておかなかったことを激しく悔やんだ。そして、同時に死の恐怖に打ち震えた。
しかし、時は刻々と経っていく。Iさんはすがる思いで警察に電話し、救援依頼を行った。この雪の中でもスマートフォンはつながり、Iさんは自分の状況を必死に訴え、警察は救援活動を開始してくれるとのことだった。
(遭難…凍死…)押し寄せる恐怖に半ばパニック状態になりつつも、Iさんは必死に考え、荷室にキャンプなどで使う寝袋を積んでいることを思い出し、それで自分の身を包むことにした。もし、救援が遅れたとしても、しばらくは寒さがしのげるだろうと踏んだのだ。
やがてエンジンが切れ、ヒーターも切れた。クルマはすっぽりと雪に埋もれてしまった。寝袋の中のIさんは、急速に冷えていく静かで暗い車内で静かに目を閉じた。だんだん体が冷えていくことはわかったが、凍えるほどではなかったため、そのまま眠りへと落ちていった。
それから何時間経ったのかはわからない。暗闇の中で突然コンコンと窓を叩く音がして「大丈夫ですか」との声が聞こえたとき、Iさんは寒さと嬉しさのあまり、「う-、うー」と微かなうめき声でしか返事することができなかった。

豪雪による交通トラブルで死亡も…

Iさん、九死に一生を得てなによりだったわけですが、こうした豪雪による交通トラブルを決して他人事と思っていてはいけません。いまの日本では、誰もがIさんのような危機に陥る可能性が少なからずあるからです。

事実、最近は突発的な豪雪が毎年のように発生してます。

2018年の2月に、福井県の国道8号線で多くのクルマが3日にわたって立ち往生する事態が起きたことは記憶に新しいところでしょう。このときは雪に埋もれた車内で一酸化炭素中毒に陥った男性1人が死亡しており、別の国道でも同様の原因で男性が1人死亡しています。

また、遡って2013年の3月には、北海道で暴風雪があり、一酸化炭素中毒のほか、雪に埋もれたクルマから出て凍死するという悲惨な事態も発生し、合計8人が死亡しています。

現在、地球温暖化が進行していることから、「雪が降ってもそう大したことないだろう」と多くの人が考えがちです。しかし、そんな風に油断していると、ある日いきなり大量の白い恐怖に襲われ、命の危機に瀕してしまうことになるのです。用心しましょう。

温暖化による大量の水蒸気が
豪雪をもたらしている

それにしても、地球が温暖化しているというのに、なぜこうも頻繁に豪雪現象が起きるのでしょうか?

気象庁の気象研究所が2016年に発表した資料によれば、それは皮肉にも地球温暖化ゆえの現象のようです。

◎気象研究所資料「地球温暖化で豪雪の頻度が高まる」(抜粋)

“地球温暖化が進行した状態では日本域の降雪は全体的には減少しますが、気温が零度以下となる本州や北海道の内陸部では大気中の水蒸気の増加などの理由で、たまに起こる極端な降雪が増大します”

“極端な降雪が起きる際には冬型の気圧配置が強まり、日本海に風の収束帯(JPCZ)ができます。将来の JPCZ は現在よりも強化される傾向が見られ、豪雪頻度の増加と対応しています”

“北陸地方の沿岸部では、温暖化による気温上昇のために雪ではなく雨として降りますが、温暖化が進んでも気温が零度以下となる内陸部や山岳部では降雪となります”

ごくごくカンタンにまとめると・・・
①地球温暖化により大気中に多くの水蒸気が発生する
②その水蒸気は大陸からの冷たい風によって大きな雲となる
③その雲が主に本州や北海道の内陸部で大量の雪を降らせる
・・・ということ。
自然は、痛んだ分をどこかに必ずしわ寄せ(しかも壮大なしわ寄せ)してくるわけですが、豪雪もその一つといえるです。

というわけで、春先までの期間に雪国の内陸部へドライブする場合は、地球温暖化によって発生確率が高くなっている豪雪被害に遭わないように、物心両面の準備をしっかり整えてから出かけるのが賢明。後編では、そうした対策の数々について紹介します。

Vol.38 豪雪で立ち往生して命の危機に。どうすれば助かる?(前編)

Vol.38 豪雪で立ち往生して命の危機に。どうすれば助かる?(後編)

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