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クルマのトラブル「もしも」マニュアル

Vol.36 踏切内で電車と事故したら数億円の賠償が必要?(前編)

2018年12月6日更新

もしも_踏切事故_イラスト1web

【今回のやっちゃったストーリー】

郊外に住むGさん(33歳・会社員)は、毎日マイカー通勤をしている。
満員電車で通勤するよりずうっと快適だったが、一つ だけ大きなストレスを感じることがあった。それは通勤ルートの途中にある小さな踏切(歩行者専用通路がない踏切)を通ること。Gさんがそこに差し掛かる時間帯が、ちょうど近くにある高校の通学時間に重なるため、大勢の高校生たちが踏切内を通り、いつもなかなかスムースに通り抜けることができないでいたのだ。通り抜ける前に警報が鳴り出したことは1度や2度ではなく、そのたびに冷や冷やの思いをしていた。
この日も、踏切は高校生たちで大賑わいだった。Gさんは、踏切前で一旦停止したあと、高校生たちに接触しないよう注意しつつ、そろりそろりとクルマを前に進めた。
が、この日は高校生たちがいつもより多く、広がりながら踏切を渡っていた。そのため、そろりそろりの前進もままならず、途中、踏切内で何度もクルマを停めるハメとなった。ようやく半分を過ぎたころ、「カン、カン、カン」と警報が鳴りだした。そして、遮断機がゆっくりとおりてきた。
「わ、わ、やばい!」
高校生たちはみんな足早に踏切の外に脱して、進行方向がサーッと開けた。が、時すでに遅し。Gさん、クルマを踏切内に留めたまま遮断機がおり切る瞬間を目にしたのだった。
遮断機を突っ切ろうにも、その前には高校生の集団が立ちふさがっていた。バックしようにも、遮断機の向こう側には後続のクルマが数台連なっていた。
Gさんは超パニックに陥った。ただ、わずかながら冷静さは残っており、すぐに車外にでて遮断機の向こうまで走り、急いで警報機の下にあった非常ボタンを押した。
「頼む、止まってくれ!」
遠からぬところから聞こえていた電車が走る音は、すぐに急ブレーキと警笛の音へと変わった。キキキキキーッ、ファーン、ファーン……。
一瞬、電車は踏切内に停まっているGさんのクルマの寸前で止まるかと見えた。だが、残念ながらそうはならなかなかった。電車はGさんのクルマの横っ腹にぶつかり、そのまま10メートルほど前に進んでからようやく止まった。それを見ていた高校生たちは、悲鳴なのか歓声なのかわからない「おおー!」という声をいっせいにあげた。幸いだれも死傷者はでなかったが、完全なる踏切事故発生の瞬間であった。
Gさんの頭のなかには、とんでもないことをしでかしてしまったという自責の念とともに、「数億円の賠償」という恐ろしい文字がはっきりと浮かんだ。Gさん、クラクラと目眩がし、冷や汗をたらしながら、その場にヘナヘナと腰を落としたのであった。

クルマが絡む踏切事故は
3~4日に1回発生する

いま、徐々に鉄道の多くが高架化されているので、踏切の数も次第に減りつつあります。
これには一つの事故が大きく影響しています。2005年3月、東武伊勢崎線の竹ノ塚駅(東京都足立区)付近にあった、係員が手動で操作する踏切で、担当していた係員のミスにより4名が死傷する事故が起きたのです。この事故をきっかけに、国土交通省の主導で、全国の踏切を対象に交通実態総点検を実施。「開かずの踏切」を中心に、多くの踏切が立体交差化されることになりました。
しかし、都市部などではこうした改善が進んでいるものの、郊外や地方には、依然として多くの踏切が存在しています。

踏切web

そのため、踏切事故も、漸次減少傾向にあるとはいえ全国で年間250件近く起こっています。しかも、その4割=約100件がクルマ(二輪含む)が絡む事故であり、単純計算しても3~4日に1回、日本のどこかでクルマが関係した踏切事故が発生していることになります。決して少ない数字とはいえないでしょう。

踏切事故の件数_グラフweb

踏切事故の発生状況_グラフweb

基本的ルールの遵守で
大きな惨劇を防ぐべし

今回のGさんの事故では幸い死傷者はでませんでした。ですが、一般的にクルマが絡む踏切事故では、クルマはもちろん、電車の損害が激しくなる傾向があります。そして、ときにはクルマの搭乗者や、電車の乗員・乗客が死傷することもあります。

そうなったら、社会的な問題として扱われるような大事故です。悲劇あるいは惨劇という以外、ほかにありません。

これを防ぐには、ドライバーが以下に列記する踏切横断の基本的ルールを遵守することが第一。わかりきったことと鼻で笑わず、もう一度しっかりと確認し、絶対に踏切事故を起こさないように気をつけましょう。

クルマで踏切を横断するときの基本的ルール(概略)※鉄道会社のHPなどを参考にして編集部で作成

①警報機がある踏切:必ず一旦停止し、警報機をよく見、音を聞いて安全を確認する。そのうえで安全に横断できたら横断する(ただし、横断先にスペースが空くまで待つ/歩行者専用通路がない踏切では歩行者が進行方向にいない状態になるまで待つ)。横断しようとしたときに警報機が鳴りはじめたら、無理な横断は絶対にしない。

②警報機と遮断機がない踏切:一旦停止の際に踏切内にはみださないように停まる。そのうえで安全が確認できたら横断する(ただし、横断先にスペースが空くまで待つ/歩行者専用通路がない踏切では歩行者が進行方向にいない状態になるまで待つ)。わずかでも電車がくる気配があれば、無理な横断は絶対にしない。
踏切横断基本ルール_イラストweb
③通行制限を設けている踏切では交通標識をよく確認し、その規制を遵守する。高さ制限のある踏切では、制限表示の高さを超えるクルマは絶対に進入しない。

④複線区間では、列車が通過した直後に反対方向の列車がくる場合もあるので必ずそれを確認する。

⑤雪道を運転中に踏切に差し掛かったときは、スリップによる踏切内への進入や立往生などに注意する。

Gさんが踏切事故を起こしてしまったのは、①のルールの中のカッコ書き部分・・・「(ただし、横断先にスペースが空くまで待つ/歩行者専用通路がない踏切では歩行者が進行方向にいない状態になるまで待つ)」・・・を守らなかったところに原因があるといえます。

もちろん、クルマの進行方向を塞ぐほどに広がって歩いていた高校生たちにも問題があります。しかし、道路交通法遵守の観点からも、Gさんは、高校生たちの流れが途切れるまで進入を待つべきでした。もし、「それではいつ渡れるかわからない」というなら、こういう通り抜けにくい現象がよく起こる踏切を避けて、ほかのルートでの通勤をチョイスすべきだったでしょう。

され、ここまでお話しした正しいアプローチからは逸脱しますが、知っておいて損はないことを一つ挙げておきます。
踏切の遮断機のポールは、軽自動車やセダンなどのクルマで突っ切ったとしても斜めに跳ねあがり、壊れないようにできています(バンやトラックなど車両ではその限りではない可能性もありますが……)。もし、遮断機のポールが降りて、立ち往生状態になったとしても、クルマがちゃんと動き、ポールの向こう側にクルマ1台分以上の空きがあるのであれば、とりあえず突っ切ることにトライしてみるべきでしょう。

踏切立ち往生から脱出_イラストweb

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