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クルマのトラブル「もしも」マニュアル

キャンピングカーの車両保険を「改造前のクルマの価格」で契約してたら、事故の補償が満額出なかった!(前編)

2020年6月24日更新



【今回のやっちゃったストーリー】

就職してから仕事一筋に打ち込み、同僚の誰よりも早く部長になった独身のTさん(37歳・会社員)は、自分へのご褒美として普段使いのクルマとは別にキャンピングカーを手に入れて、週末アウトドアラーになることを決めた。
どうしていきなりアウトドアラーなのかというと、一つは、出世競争が一段落したので、豊かな自然に触れてリフレッシュする機会を増やし、新たなステップアップのための活力にしようという余裕綽々の考えがあったから。もう一つは、これまで出逢ってきた妙齢の女子たちに「仕事一筋なんて、つまんない男だわ」と言われて袖にされることたびたびで、だったら仕事のかたわら趣味も充実させた男になっていいパートナーを見つけてやろうじゃないかという下心、いや野心が湧き起こったからだった。そこには、今はキャンプが流行していて野山には素敵な女子が溢れているとかで、もしかしたらいい出会いが得られるかも知れないという一石二鳥の計算も働いていた。Tさんは、何事も一旦方向性を決めたらそれに沿って効率的に動ける、やはりできる男なのであった。
キャンピングカーの入手の仕方も戦略的かつ効率的だった。まず新車の国産のバンを約300万円で購入し、それをそのまま住宅リフォーム会社に持ち込んでキャンピングカー仕様に改造するという方法をとった。そこの社長が2級整備士資格をもっているうえにキャンピングカーライフを趣味にしていることから、会社はサイドビジネスとしてオーダーメイドの改造を年に数台請け負っていて、界隈ではそのクオリティとコスパがすこぶるいいとの評判が立っていた。Tさんは、ほかのキャンピングカーならびにアウトドアラーを出し抜くにはここにお願いするのが一番と考え、約200万円分(装備費約100万円、工賃約100万円)の改造をオーダーしたのである。
実際、2ヵ月間ほどかけて造られたキャンピングカーの出来栄えはすばらしかった。木目調の落ち着いたインテリアのなかに、2人用ベッドになるソファや、電子レンジ・ホットプレート・冷蔵庫が付いたミニキッチン、据付テーブルなどが完備され、どれも使いやすさと快適性を高い次元で実現させていた。もちろん、運転に影響する重量バランスについても申し分のない配慮がなされていた。もし、専門ディーラーで完成品を購入したとすれば、おそらく総額500万円では到底足りなかったであろうと思われた。
「いやあ、社長のところにお願いしてよかったよ。こんどの連休は早速これでキャンプデビューすることにするよ」
「喜んでいただけて何よりです。どうかアウトドアライフを楽しんでください。そして、どうかいいパートナーも見つけてください(笑)」
「あははは、まあ、このキャンピングカーなら、どっちも何とかなりそうな気がするな。近いうちきっといい報告ができると思うよ」
双方よしの談笑しばし。Tさんは笑顔のままクルマを受け取って帰る支度を始めた。と、クルマに乗り込むと同時に社長が「あ、そうそうTさん、もう自動車保険には入っているとは思うけど、このキャンピングカー用の車両保険も忘れずに契約しておいたほうがいいですよ」とマジメな顔をして忠告してきた。Tさんは一瞬「ん?」と思ったのだったが、それに対してもやはり笑顔のままで「ああ、それは大丈夫」との答えを返して、何事もなかったようにクルマを発車させた。ワゴンの新車を約300万円で購入したときに、すでにネット保険で車両保険も付けた保険契約を済ませていたので、まったく問題がないと考えていたのだった。


さて、待望のキャンプデビューとなる連休初日の早朝、Tさんは隣県の山間にあるオートキャンプ場を目指してピカピカのキャンピングカーを自宅からスタートさせた。新しいクルマの車幅や操縦感がまだ十分に把握できていなかったため、慎重に運転するつもりだったが、秘密基地めいたキャンピングカーを手に入れ、初のキャンプにいく(あるいは素敵な女子と出会う)ことに心がときめき、実際は集中力に欠ける運転になっていた。
そのせいだろう、その小さな事故は当たり前のようにして起きた。自宅を出て5分も経っていないころ、住宅街の信号のない小さな交差点を左に曲がろうとしたとき、冷静に内輪差を読み切れず、角に設置してあった小さなガードレールでスライドドアからリアフェンダーにかけてのボディを擦ってしまったのだ。ガガガガッ。
クルマを降りて確かめると、あわれ……ピカピカのボディはベコベコ状態に。Tさんは激しく落ち込んで、「ああ、オレとしたことが」と深い嘆声をもらした。「こんなんじゃあ、キャンプは中止だよ」。
だが、真に落ち込むのはその後のことだった。クルマの修理代の見積もりが思った以上に高かったので車両保険を使うことにしたのだったが、数日後に契約しているネット保険の会社から思いもよらぬ連絡が入ったのだ。
「Tさま、弊社の査定を行う者がTさまのお車を拝見したところ、中がキャンピングカー仕様になっていて、総額で約400万円することが判明しました。ところが、Tさまは元の車両価格の300万円分を対象として車両保険をご契約されていたっしゃいます。こうした場合、75%の『一部保険』の扱いとなり、ボディ修理のための補償も75%ということになります」
ぎょっとしたTさん、すぐに強い口調で異議を申し立てた。
「ちょっと待ってください。たしかに僕は車両価格である300万円を対象とした車両保険にしていましたよ。ええ、それは自覚してます。でも、だったらというべきか、だからこそというべきか、車両すなわちクルマの一部であるボディを修理するための補償は100%出て然るべきなんじゃないですか? プラスαのお金をかけて改造したのはキャンピングカー仕様の内装や装備品だけ。それって車両を補償するための車両保険にはまったく関係ないと思うんだけど」
だが、電話の向こうから、ネット保険会社のオペレーターは落ち着いた声でこう答えた。
「いえいえ、Tさま。車両保険は、車両本体だけではなく、クルマに固定して付けられている装備品も対象となります。よって、保険料の算出は、車両本体価格だけでなく、クルマに固定して付けられている装備品を含めて行うことになります。それは、後付けで改造されたキャンピングカーであっても同じことになります。Tさまの場合でご説明いたしますと、車両本体価格300万円に、その後の改造での工賃を抜いた装備費100万円を加えた総額400万円を対象とした車両保険が必要でした。その場合は、ドアの損害であろうと後付けのキッチンの損害であろうと基本的に時価の100%が補償されるのですが、総額400万円のクルマに300万円分を対象とした車両保険では、75%分の『一部保険』ということになり、基本的にすべて75%の補償となるのです」
ガーン、知らなかった。補償が75%しか出ない事実もそれなりにショックだったが、できる男としての自負がことさら強いTさんとしては、自分の知識不足がものすごくショックだった。仕事だったら評価の急降下は免れないところ。なのでTさん、より激しく「ああ、オレとしたことが!!!」と嘆き落ち込み、うかつな自分を深く呪ったのであった。
結局、その後、クルマは直ってきたものの、アウトドアラーへの意欲はすっかり失せていて、Tさんは週末も連休も自宅に引きこもりがちとなってしまった。当然、素敵な女子との出会いも当分ないことになりそうな感じに……。あらら。
Tさん、そうなる気持ち、わからないでもないけど、どうか早い立ち直りを。じゃないとせっかくのキャンピングカーと、あなたの輝かしい未来が台無しになってしまう。

キャンピングカーの自動車保険は
多くの保険会社が取り扱っている

Tさんの勘違い事例について解説する前に、まず、キャンピングカーの自動車保険に関する誤解を解いておきましょう。

インターネット上では「『キャンピングカー保険』は特殊な保険なので、取り扱っている保険会社は少ない」といったような記述がポツポツと見受けられます。でも、そんなことはありません。

すべてではないにしても、東京海上日動火災保険やあいおいニッセイ同和損保をはじめ、それなりに多くの保険会社がキャンピングカーの自動車保険を取り扱っています。決して少ないわけではありません。

そもそも「キャンピングカー保険」という固有の保険商品が存在するわけではありません。

キャンピングカーを保険対象としている保険会社は、自家用8車種というものを定めていて、〈自家用普通乗用車〉〈自家用小型乗用車〉〈自家用軽四輪乗用車〉〈自家用小型貨物車〉〈自家用軽四輪貨物車〉〈自家用四輪貨物車(最大積載量0.5トン以下)〉〈自家用四輪貨物車(最大積載量0.5トン超2トン以下)〉〈特種用途自動車(キャンピング車)〉の8車種であれば、自動車保険として契約を引き受けています。いわゆる「キャンピングカー保険」は特殊のものではなく、自家用8車種の中の〈特種用途自動車(キャンピング車)〉に対する任意保険の契約ということなのです。

ただ、まったく特殊でないかというと、そう言い切れない部分もあるにはあります。たとえば外国から輸入された目が飛び出るほど高額なキャンピングカーなどは、対人・対物保険はOKだとしても、自損事故などで被った車両と装備の損害に対する補償を行う車両保険の契約についてはNGとなることがあったりするのです。

その可否の決定は保険契約を担当する保険代理店がするのですが、キャンピングカーの造りがあまりにスペシャルかつ豪華で、修理する際に保険の補償ではカバーしきれないと判断された場合に、車両保険の契約だけは否となってしまうようです。

とはいえ、なべて見ればこれもレアケース。Tさんが購入したような一般的に人気のある国産のワゴンやバンなどを改造したキャンピングカーなどは、よほどスペシャルな改造か、交通法規に抵触するような改造を施していない限りはまったく問題ありません。自家用8車種を保険対象としている保険会社であれば、どこでも車両保険を含めた自動車保険の契約を引き受けてくれるはずです。

だから、昨今のアウトドアレジャーの盛り上がりを受けて、一般的なキャンピングカーの購入などを考えている皆さん、自動車保険の契約に関してはどうかご安心のほどを!

キャンピングカーの車両保険を「改造前のクルマの価格」で契約してたら、事故の補償が満額出なかった!(前編)

キャンピングカーの車両保険を「改造前のクルマの価格」で契約してたら、事故の補償が満額出なかった!(後編)

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