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2020年1月17日更新
クールな経済分析だけでは
クルマの本質はわからない
電気自動車(EV)や自動運転車といった未来のクルマの存在感が大きくなるにつれて、多くのメディアが今後のクルマ社会ならびに自動車業界の変化について言及するようになった。
中でも、ビジネス系メディアの発信は目立つ。CASE(Connected=コネクテッド、Autonomous=自動運転、Shared&Services=シェアリング、Electric=電動化)や、MaaS(Mobility as a Service=サービスとしてのモビリティ)といったキーワードを使いながら、盛んに近未来予想図を述べ立ててくる。
「世界的にEV化が進行している。近い将来、日本においても市場からエンジン車は消え、EVが席巻することになるだろう……」
「部品点数が少ないEVはつくりやすいので、さまざまな業態の企業がクルマを製造・販売するようになる。それは既存の自動車メーカーにとって大きな脅威となるだろう……」
「自動運転車は先行して実験を進めているグーグルをはじめとするIT関連企業が根幹技術を押さえる可能性が高い。既存の自動車メーカーは苦戦を強いられるかも知れない……」
「クルマは所有ではなくシェアによる使用が多くなっていく。それが進めば、いま以上にクルマの販売台数は減っていくだろう……」
「クルマがネットに繋がるコネクテッドカーの時代には、新しいサービスの数々が生まれてくる。自動車メーカーは、それに関わる業務にチカラを入れなければ生き残れないだろう……」etc.
どれも経済的視点でのしっかりとした分析をもとにして書かれているため、「なるほど」と深く納得させられる。だが、これまで魅力的と映っていた自分のカーライフが一気に霧散するような話でもあるため、多少のガッカリ感が否めないのも事実だったりする。
実は、今回取り上げる『2019年版 間違いだらけのクルマ選び』の著者である島下泰久氏は、そうしたビジネス系のクールな発信内容に苛立っている。
工業製品としての自動車、商品としての自動車、その経済効率性については語られているのかもしれないが、少なくともそこには、百何十年にも渡って幾多の人々が、各々のかたちで愛情を注ぎ、故にここまで存在してきたクルマというものの本質については、何も語られていないと言っていいと思う。(『2019年版 間違いだらけのクルマ選び』より)
アウディの開発者が力説していたのはコンポーネンツの冷却についての話である。--中略-- これでもかというぐらいの冷却サーキットが組まれているのは高い動力性能を継続的に発揮するため。確かにテスラ車はじめ今までのEVでは、全開加速を数度繰り返すと、あからさまに勢いが衰えてくるが、e-tronでは何度試みようと加速が鈍ることはないと彼らは言うのである。(『2019年版 間違いだらけのクルマ選び』より)
(たとえば)個人所有車のシェアリングの拡大は、クルマの稼働率を高めることになる。--中略-- 稼働率を50%にまで引き上げられたら、理屈としてはクルマの数は10分の1で済む。これはすごいインパクトである。しかしながら、それは必ずしも自動車市場を10分の1に縮小させる話ではないのだ。もし、そうなればクルマは始動と停止を今の10倍繰り返すことになり、乱暴に計算すれば走行距離は10倍になる。つまり、クルマの数は10分の1になっても、整備や消耗品の交換時期は10倍のペースで訪れ、おそらく買い替えサイクルは10分の1の短さになる。つまりクルマの販売台数は変わらないことになる。(『2019年版 間違いだらけのクルマ選び』より)
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