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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2021年3月18日更新
EV(電気自動車)の心臓とも例えられる駆動用バッテリー。現在、ほとんどのEVが駆動用バッテリーとして、リチウムイオン電池を搭載している。実は、「リチウムイオン電池がなければ、今日のEVはなかった」と言われるほど、リチウムイオン電池の果たした役割は大きい。リチウムイオン電池とEVの関係を探ってみよう。
リチウムイオン電池の開発者に
ノーベル化学賞が授与された
2019年のノーベル化学賞は、日本の吉野彰博士(旭化成株式会社名誉フェロー・名城大学教授)をはじめとするリチウムイオン電池を開発した3人に授与された。
これは、リチウムイオン電池がスマートフォンやパソコンへの搭載でモバイルインターネット社会の推進を後押ししたこと、そして、EVへの搭載や家庭用蓄電池の普及などによって化石燃料の使用を抑制すると同時に再生可能エネルギーの利用を促進し、環境・エネルギー問題を解決するための糸口をつくったことをスウェーデン王立化学アカデミーが高く評価した結果である。
リチウムイオン電池とは、いったいどのような仕組み・特長をもった電池なのだろうか。
正極と負極の間を
リチウムイオンが行き来する電池
そもそも電池には大きく分けて、使い切りの一次電池と、放電と充電ができる二次電池(蓄電池)の2種類がある。リチウムイオン電池は、この中の二次電池に分類されている。
その構造と仕組みは下図のとおり。正極と負極の間でリチウムイオンを行き来させて充電したり放電したりする。
1984年に、吉野博士が炭素を含む材料が負極材として有効であることを発見し、実用化の目途が立った。それを元に、1991年にはソニーが世界で初めて携帯電話用バッテリーとしての製品化に成功している。
エネルギー密度が高いから
EVの駆動用バッテリーに最適
この比較的歴史の浅いリチウムイオン電池が1990年代から世の中に急速に普及することになったのは、従来の二次電池の主流であった鉛電池やニッカド(ニッケルカドミウム)電池、ニッケル水素電池よりも優れた点が多くあり、かつそれらが時代のニーズにマッチしたからだった。
主な長所は以下の三つ。
①エネルギー密度が高い(電池の小型化・軽量化が可能)
体積エネルギー(体積1ℓの電池に蓄えられる電力量:単位Wh/L)も重量エネルギー密度(重量1㎏の電池に蓄えられる電力量:単位Wh/kg)もニッカド電池やニッケル水素電池の約3倍。その分、電池自体の小型化・軽量化が可能。
②電圧が高い
電圧がニッカド電池(1.2V)やニッケル水素電池(1.2V)の約3倍(3.7V)。
③優れたサイクル寿命がある
急速な充電が可能で、かつ充放電が多く繰り返せる(約3,500回)。
こうした長所を持つリチウムイオン電池は、小型化・軽量化が求められ、かつ何度も充電しながら使う製品のバッテリーとするには最適だった。
例えば、90年代から盛んとなったIT革命のなか、スマートフォンやパソコンに搭載されるようになった。これにより、非常に便利なモバイルインターネット社会が到来することになった。
また、21世紀を迎えて地球温暖化を防ぐ必要が声高に叫ばれるようになる中、CO₂を排出しないEVのバッテリーとして有望視され、実際に採用され始めた。これにより、環境・エネルギー問題を解決するための大きな光明が見い出されることとなった。
ちなみに、2010年に登場した三菱自動車のi-MiEVは、量産型EVにおける世界初のリチウムイオン電池採用例。以降、EVやPHEVといった量産型の電動車に搭載される駆動用バッテリーは、ほぼすべてがリチウムイオン電池となっている。
航続距離が400㎞に伸びるなど
漸次進化は遂げているが……
EVなどの電動車に搭載されている駆動用バッテリー用のリチウムイオン電池は、ここ10年、構造ならびに極材などの改良が漸次加えられ、どんどんと性能を向上させてきている。
例えば当初の重量エネルギー密度が約100Wh/㎏(初期のi-MiEV搭載のバッテリー)あたりだったところ、現行では250Wh/㎏前後にまでアップするなど、2~3倍となっている。その分、小型化・軽量化も進んでいる。
こうした進化した電池を搭載したEVの航続距離は、搭載する量にもよるが、400㎞にまで伸びた。最初のi-MiEVの航続距離が160㎞(10・15モード)だったことを考えれば、その伸長ぶりがいかに大きいかがよくわかる。
ただ、これほどまでに高性能化を続けてきたリチウムイオン電池も、そろそろ進化の限界が近いと言われている。重量エネルギー密度でいえば、500~600Wh/㎏にするのがMAXであろうと見られている。
リチウムイオン電池を世に出した立役者である吉野博士自身、2018年時点でこんな風なネガティブな発言をしている。
「エネルギー密度と安全性はトレードオフの関係にあり、エネルギー密度の向上には限界がある。市場規模の拡大に伴うコバルトなど資源の不足問題もあり、リチウムイオン電池が主流であり続けられるのは2025年ぐらいまで」(週刊東洋経済 2018年3月31日号)
「次世代の蓄電池として最も期待されているものの一つは全固体電池でしょう」(文藝春秋 2019年12月号)
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