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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2023年6月23日更新
コロナ禍では車中泊がブームになった。
あまり他人と接することなく自由に旅できるところが受けた。最近のクルマが居住性を高めていることもブームの一因となっている。
今回紹介するのは、約3年間のコロナ禍の中で行った車中泊の様子を描いたコミックエッセイ。車中泊ブームに乗り、すでに3巻が発売され、今も人気を博している。そして、2023年の春に3巻の中の最初の1巻が大幅加筆され、「3年目のチューンナップ」という副題を付けて改めて刊行された。
ただし、本書はもともとブームを当て込んで描かれたものではない。
作者が車中泊ライフをスタートさせたのは、コロナ禍前の2019年秋のこと。日々、車中泊に関するあれこれをマンガに描いてツイッターで発信していたら、たまたまコロナ禍と車中泊ブームがやってきて人気に火がつき、書籍化が実現した。
自発的にはじめた生活だから冒険的であり魅力的。多くの読者を引き付けたのも納得である。
ちなみに、作者が車中泊をはじめたきっかけはタイトルにあるとおり。
離婚後、ローンが残っていた持ち家を売って身軽になったことと、同時期に免許を返納した父からスズキ・エブリイワゴンを譲り受けたことが大きかった。
これにより作者は自由に生活できる環境が整ったと気づき、日本各地をクルマで巡りながら生きていくことに決めたのであった。今の漫画家は、タブレットひとつあればどこでも仕事ができるという状況も背中を押した。
自由な旅のために
一番大切なものは?
このマンガは、年中続く車中泊ライフの様子を淡々と描いている。
行く先々の観光ガイド的な部分は多々あるが、華やかさはない。紹介されるのは、ふと立ち寄ったマイナーな観光地の面白さや、偶然出合ったリーズナブルな地元料理の味わいばかり。非常に地味だ。
しかし、地味は滋味でもある。読み進めるうちに、どれも日常的な旅でしか得られない希少な味わいであると感じられ、読者の旅への欲求を強く刺激する。
あまりお金をかけないで快適に車中泊を続けるための細かな改造や、ちょっとしたノウハウの数々も読者をうならせる。いずれも極めて実用的。実際に車中泊ライフに挑戦したいと考える人にとっては役立ち度満点の内容となっている。
以下はその一例である。
◎ 東京都心付近の駐車場は車中泊に適さない。高い確率で警官から職務質問を受ける。
◎ 車中泊のゴールデンシーズンは梅雨。車中は暑くも寒くもなく、雨も気にならない。
◎ 寝袋は意外に不便。夜中にトイレに行くときにいちいち出入りするのが面倒。
◎ 大容量のポータブル電源は必須。容量が小さいと例えば冬の電気毛布が朝までもたない etc.
ここまで読み進めた読者は、「これを参考にすれば、自分も自由がいっぱいの車内泊の旅に出掛けられる」と思うかもしれない。
気持ちはわかる。しかし、そうとも言い切れない。この作品の第1巻のラストには、もうひとつ必要不可欠なものが詩的あるいは哲学的に語られている。
〈日本各地 さまざまな道を巡っていると そこには当然 他の車もいて皆がルールやマナーに則って走っている それを乱すことはただの暴走でしかない〉
〈うまくいえないけど ドライバー各々が秩序を守った上で皆の目的地は違う…それが心地よくてとても好きだ〉
〈電気自動車や自動運転…道路を取り巻く環境はこの先どんどん変わっていくが とりあえず2023年もオレは…ボーンフリー(編集部注:愛車の愛称)のハンドルを握っていると思う…〉
〈大きな秩序の中で自由に…〉
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