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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2023年5月30日更新
クラシックカーは
20世紀の機械遺産
涌井清春氏は、日本を代表する“クラシックカー屋”。
長年にわたり、古いロールスロイスとベントレーの販売を行う中で、日本における健全なクラシックカー市場の形成に努めてきた。同時に、私設のクラシックカーミュージアムをつくるなど、クラシックカー文化の醸成にも尽力してきた。
それらの活動を貫いたのは、以下のような哲学である。
「クラシックカーは20世紀の文明が生み出した貴重な機械遺産」
「自分が買ったからといって、ぞんざいに扱っていいものではない」
「入手した者はクルマを愛でるとともに、自分は遺産の一時預かり人であると自覚し、後世に継承すべく維持、保存に努めるべきだ」
商売人ながらも常に高邁かつ高潔。日本や欧米の多くの紳士的なクラシックカーファンや業界人から厚い信頼を得てきた由縁である。
本書は、そんな氏の幼少期から77歳となった現在に至るまでの独自の生き様を、関わってきた数々のクラシックカーの魅力を紹介しながら描いている。白洲次郎、吉田茂、小林彰太郎といった巨人たちにまつわるクラシックカーのエピソードも盛り込まれ、クラシックカーファンならずとも十分楽しめる内容となっている。
移動のためのクルマと
趣味のためのクルマ
とはいえ、この本は懐古趣味を満足させるだけで終わる一冊ではない。
CASE時代のクラシックカーの存在意義にも言及し、今後のクルマ社会の在り方への関心もかき立てている。
そもそもクラシックカーはCO2をたくさん出すクルマであり、先進安全機能がないマニュアル車である。それを愛好・礼賛することは、クルマの電動化やデジタル化の全面否定につながるように思える。だが、本書において涌井氏は180度異なる見解を示している(以下、同書から引用)。
〈(CASEの推進は)一人のクラシックカーを愛する者としても大歓迎です。これからの自動車が、純粋に移動のためのものと、趣味の対象とに明確に分かれるのはとても好ましいからです〉
〈これから、自動車は今まで以上のスピードで進化していくでしょう。高度に進化したクルマから見れば、クラシックカーは過去の遺物にしか見えません。しかし、クラシックカーの延長線上に未来のクルマもあるのではないでしょうか。デジタルが駆使され、技術的には何の関連もないように見えますが、文化としては近未来のクルマとクラシックカーはつながっています。自動車文化の遺産として、クラシックカーを未来の人々に受け渡さなければならないと私は考えています〉
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