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クルマのトラブル「もしも」マニュアル

Vol.40 高速道路での落下物事故。えっ、自分も修理代を払うの?(後編)

2019年4月23日更新

もしも_落下物2web

前編のストーリーにあるように、高速道路で思わぬ落下物事故に遭遇してしまったKさん。ストーリー後半で、保険会社から「フロントガラスや車体の修理代について全額相手持ちとならず、Kさまにも過失割合に応じた支出が生じますので…」との説明をされます。後編では、落下物事故にまつわる過失割合などについて掘り下げます。

物を落としたクルマの特定には
高性能ドライブレコーダーが有効

前編でも触れましたが、落下物による事故は、確かな証拠がない限り、相手(物を落としたクルマ)を特定して責任を問うのが難しい側面があります。

それは、既に道路上に落ちていた物を踏んだことによる事故はもちろん、先行するクルマから飛来してきた物で起こった事故でも同様です。例え、物が落ちる瞬間を目撃し、相手のナンバーを憶えていたとしても証拠としては不十分。相手が否定すれば、裁判にでも持ち込まない限り、なかなか責任が問えないことになってしまいます(裁判に持ち込んでも、結果はケースバイケースです)。相手の責任を問うには、第三者が確認できるしっかりとした証拠が必要なのです。

Kさんの場合は、幸いなことに高性能なドライブレコーダーを装着していて、先行車が物を落とした瞬間とナンバーがちゃんと映っていたので、その部分はなんとかなりました。これから述べるその後の過失割合のことはともかくとして、ひとまずは、全面的なやられ損=泣き寝入りという最悪の事態は免れたのです……。

高性能なドライブレコーダーは現在、主にあおり運転の証拠を残すものとして脚光を浴びているわけですが、こうした落下物事故をはじめ、さまざまな事故においても十分な証拠を残してくれるスグレモノ。付けておいて、決して損ということはないでしょう。

相手が特定できないときは
自分の車両保険で修理することに

さて、ここからKさんが遭遇した落下物事故をケーススタディにした保険の話となるのですが、まずは「もし、Kさんがドライブレコーダーを装着しておらず、相手が特定できなかったとしたら、クルマの修理代は誰がどのようにして支払うのか」について見ていきましょう。

ズバリ結論からいうと、特定できない相手からの支払いを期待することはできないので、修理代は自分の懐からというのが基本となります。つまり、まったくのやられ損になるということです。残念ながら……。

ただし、自分がちゃんと任意保険の車両保険に入っていればまあまあ大丈夫。そこから補償されるので、完全なやられ損ということにはなりません。ホッ……。

もちろん、保険を使うことで保険料は翌年からアップするため、それが修理代より高くなるかどうかという算段も必要になりますが、さて、どうなんでしょう。そもそも高速走行中のクルマの損傷というのはそれなりに大きいのが普通です。たとえばKさんのようにフロントガラス(交換)やピラーならびにミラーまで直すとしたら修理代は数万円レベルでは済ないはず。そうした場合などは、間違いなく車両保険からの補償が懐を大いに助けてくれます。

そう、相手の特定が難しい落下物による事故において、車両保険はかなり頼りになる存在となるのです。

ただし、エコノミー型の車両保険の一部には、「飛来中・落下中の他物との衝突」を対象外とするものもあるので注意してください。自分の車両保険がエコノミー型だったと思う方は、対象となる範囲をもう一度確認しておきましょう。

落下物による事故では
自分も過失責任が問われる

次に、「相手が特定でき、相手の責任が問える」というケースについてですが……実は車両保険は、この場合でも頼りになる存在となります。

どうしてかというと、落下物による事故では、落としたクルマ(先行車)が100%悪いということには滅多にならず、被害に遭った自分もある程度の割合の過失責任が問われる可能性が大きく、そうなった場合はその分の支払いが発生するからです。

例えば、先行していたトラックが路上に落とした積荷を踏んで事故となり、相手が非を認めたとしても、自分(=後続車)も「前方不注意」などの過失責任が問われる可能性が大きく、そうなれば、自身の過失割合分を支払う必要があります。

落下物による事故web

また、Kさんの事故の例でいうと、飛来してきた落下物を回避できなかったのは「適正な車間距離をとっていなかった」(=車間距離不保持)からではないかと、過失責任を問われる可能性があります(ドライブレコーダーの映像で車間距離も判定されます)。また、速度違反などがあれば、さらに過失責任は大きくなります。そして、相応の過失割合分を支払う必要が生じます。

落下物による事故2web

高速道路上での落下物事故の過失割合は、一般的には「先行車60%:後続車40%」(判例タイムスによる)を基本として、事故の様態を加味して決まるようです。
また、一般道における落下物事故では、後続車の過失割合が高速道路での落下物事故の場合よりも大きくなります。これは、後続車には「前方注意義務」があり、正しく運転していれば事故を回避できたのではないか、と考えられるからです。

ですから、先行車にさらなる交通違反などが認められる場合は別として、一般的な落下物事故では自車の損傷を直す代金の4割程度を負担するということになるのです。それを考えると、やはり車両保険の存在は不可欠といえるでしょう。

さて、このように、落下物事故の過失割合についてじっくり考えてみると、交通ルールに則って運転することがいかに大切なことであるかがわかります。
高速道路で、思わぬ落下物が目の前に生じようとも、私たちはそれを避けて運転しなければなりません(当たって事故になれば4割の負担なのですから)。そう考えると、「高速道路で80~100メートルの車間距離が本当にいるの?」などとうそぶいてはおられぬはず。慣れや油断におちいることなく、安全運転しましょう!

高速道路での落下物事故。えっ、自分も修理代を払うの?(前編)

高速道路での落下物事故。えっ、自分も修理代を払うの?(後編)

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