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クルマのトラブル「もしも」マニュアル

Vol.3 高価なペットを轢いて弁償を求められた。 うーん、どう対処すればいい?

2016年5月6日更新

もしもイラスト3-2

【今回のやっちゃったストーリー】

地方在住のサラリーマンCさん50歳。普段の足用として新しく軽自動車を購入しました。ほんとうは、それまでずっと乗ってきた普通のセダンにしたかったのですが、物価が上がるわりに給料がアップせず、ダウンサイジングを余儀なくされたのでした。

ただ、実際に乗ってみたら、燃費のみならず、走り、居住性はバツグン。「うーむ、150万でこの高性能。最近の軽ってスゴイなあ……」結局Cさんは、自分の図らずもの選択を寿ぐことになったのでした。

そんなCさん、とある休日に、そのスゴイ新車を駆ってひさしぶりに都市部にでかけました。小回りが効いて、レスポンスがいい新車は、どんな道でもクイクイと進み、万事快調です。Cさんは、改めてその使い勝手のよさに惚れ惚れとし、気分爽快となったのでした。が、大通りを流れに乗って走り、青信号の交差点に差しかかったときのことです。

目の前にリードを付けたままの小型犬が飛びだしてきました。Cさん、咄嗟の急ブレーキをかけますが、しかし、それもむなしく小型犬をクルマの下に巻き込んでしまうことに。その瞬間、非常に変な音。轢いてしまったのはまちがいのないことでした。

「わー、やっちゃった」

クルマをゆるりと道路の端に止め、おそるおそる現場にたしかめにいったところ、その小型犬は無残に死んでしまっていました。もともと動物好きのCさんは、いうにいわれぬ感情に襲われ、ボー然とその場に立ち尽くしました。(クルマのほうは、外側に目立ったキズはないものの、下部にはなんらかの問題が発生している可能性はありました)

と、そこへ大きな金切り声が響きます。

「ちょっと、そこのあなた!  わたしの◎◎ちゃん殺したわね。どうすんの。150万円弁償しなさいよ!」

弁償? 150万円? Cさん、突然の叱責に戸惑いつつ、その飼い主らしき奥さんに相対することとなりました。ところが、ヒステリックな金切り声はいっこうに止まず、会話がはじまりません。

ほんとうは哀悼の意を表しつつも、「リードを離した責任もあるんじゃないですか?」などと多少の反論もしたかったのですが、その猛烈な勢いと、かわいい犬を死なせてしまった罪の意識による躊躇いで、それが叶いません。

とりあえずCさん、奥さんの叫びのわずかな間隙を縫い、しどろもどろの早口でこう提案しました。

「あの、愛犬を轢いてしまったことはたいへん申し訳なく思っております。ほんとかわいそうなことをしました。だけど、いきなり150万円といわれても、困ります。
それはわたしのクルマの価格と同じくらいでありまして、そう簡単にだせる金額ではありません。なにしろ、わたし、しがないサラリーマンなものですから……。
そんなわけで、とり急ぎ、警察とか保険会社とかに連絡させてもらえませんでしょうか。いろいろなことは、それから落ち着いてお話するようにいたしましょう」

すぐに警官が駆けつけてくれ、当事者および目撃者からの聞き取りがはじまりました。

しかし、またもや奥さんが「この人、150万円した◎◎ちゃんを殺したのよ!」と叫びつづけるなど、混乱はやみません。さてさて、この事故、どうやったらうまく結着がつくのでしょうか?

違法運転でない限りCさんに罪はないが……

まず、道路交通法の視点でいうと、Cさんは、速度超過や居眠り運転、酔っ払い運転といった違法な運転をしていない限り罪には問われません。Vol.3で「野生動物との事故は物損事故と見なされる」と書きましたが、ペットの場合も同様ということです。

かわいいペットをモノ扱いするなんて許せないと思われるむきもおありでしょう。でも、それがいまの日本の法律。致し方ありません。

では、Cさんにはまったく負うべき責任はないのでしょうか?

なかなかむずかしいところです。非常にあいまいないい方になりますが、動物愛護上の道義的責任はあるでしょうし、民事裁判にもちこまれれば、なんらかの過失をきっちりと問われる可能性だって充分にあり得ます。そういう意味では完全にノープロブレムとまではいい切れません。

ことはシンプルなようで、それなりにやっかい。当事者同士で解決を図ろうとしても、こじれること必至でしょう。

保険会社に任せるのが現実的解決法

Cさんが、この一件をなるべく穏便に終わりへともっていくためには、やはり保険会社に交渉と賠償を任せることが一番現実的です。つまり、任意保険を契約している保険会社に物損事故として扱ってもらい、過失割合に従ってペットの時価などとクルマの修理費用を相殺する形で賠償するようにするのです。

おそらく、Cさんのようなケースでは、Cさんが違法な運転をしておらず、相手がリードを離してしまったという事実があることから、賠償金はわずかで済むことでしょう。相手が求めている150万円を払うということは、まずありません。相手が心から納得してくれるかどうかという問題は残りますが、Cさんのほうではそれほど大きな負荷を感じることなくすべてが無事に終わるはずです。そういう意味で、Cさんが事故後すぐに警察そして保険会社に連絡を入れておいたのは大正解だったといえます。

ちなみに、愛犬を失った奥さんがアピールする150万円という弁償額は、あながちブラフとはいいきれません。レアな犬種であれば、100万円を超えることはざらです。なかには数百万円で取引される犬だっています。軽自動車はもちろん乗用車が買えるほどの値段の犬が、普通に街を散歩している可能性があるのです。ペットが「モノ」だからといって甘く見て、乱暴な運転をして被害を与えてしまうと、きっと痛い目に遭います。

まあ、お金の問題はともかくとして、当たり前ですが、どんなときでもすべての命を尊重するやさしい運転を心がけるようにしましょう。

 

▼参考文献
※参考文献:弁護士による交通事故SOS HP/保険スクエアバン!HP/動物法務相談室HP/街の身近な法律家HP 他

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