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クルマのトラブル「もしも」マニュアル

Vol.84(前編)亡くなった肉親が放置していたクルマ。それも立派な“遺産”です!

2023年9月14日更新

もしも_負の遺産_1

【今回のやっちゃったストーリー】

堅実をモットーとするAさん(40歳・会社員)は、ある日、3歳違いの放蕩の兄が亡くなったという知らせを受けた。短期のアルバイトを2日続けて無断欠勤し、それを不審に思った会社の人が住まいのアパートを訪ねたところ、布団の中で冷たくなっているのが見つかったとのこと。心臓麻痺による突然死だった。

兄は学校を出てから定職に就かず、家庭も持たず、ずっとフリーターのまま自由気ままに生きていた。酒と博打が大好きで懐はいつもカツカツ。何年かに一度はAさんに金の無心をしてきた。心臓麻痺はそんな不安定な暮らしぶりがたたった結果といえた。

両親は他界しており、唯一の肉親であったAさんは、自分の家族と数人の親戚だけを呼んで簡単な葬式をあげて兄を見送った。住んでいたアパートにはめぼしい家財道具はなく、わずかばかりあった物もゴミとして処分した。

ただ、普段使いの鞄の中から見つかった貯金通帳には、50万円ほどの残金があった。Aさんは遺産相続の放棄も考えたが、結局、遺産相続の手続きをしてそれを受けとった。Aさんが支払った葬式代や兄が住んでいたアパートの家賃、ゴミの処分費用を足すとちょうどそれくらいの額。差し引きゼロの収支となった。

「兄さんにはいつも迷惑をかけられてたけど、最後は借金を残さず帳尻を合わせて逝ってくれた。そこは褒めてやるよ(苦笑)」

すべての処理が終わった後、Aさんはすぐにいつもの生活に戻った。Aさんも自分の家庭の小さな幸せを守ることに忙しく、感傷に浸っている暇などなかった。ところが、兄の死から3カ月後、こんな予想外の電話がかかってきた。

「お兄さんにお貸ししていた駐車場の料金が1年分未払いです。弟のAさんが遺産相続人と聞きました。総額9万6千円の支払いをお願いします。それから置いたままのクルマの処分もお願いします」

寝耳に水の話だった。兄がクルマを持ち、駐車場も借りていただなんて。間違い電話かと思い、相手に何度も内容を確かめた。だが、先方は本当の話だという。

電話を切ってしばし呆然。ようやく我に返り、落ち着いて考えると、思い出されることがあった。何年か前、兄が競馬で大穴を当ててAさんに初めて焼き肉をごちそうしてくれたとき、こんなことをしゃべっていた。

「俺、今度の金で中古のクルマでも買おうと思ってるんだ。平日はそれで個人請け負いの配送の仕事をして、週末はドライブがてら地方競馬場に行くって算段。どうだ、いいアイデアだと思わないか」

あれが本気だったとしたら、実際にクルマを買った可能性は高い。そして、買うには買ったが、配送の仕事はうまくいかず、もてあまし気味となり、やがては駐車場料金の支払いもままならなくなったという兄らしい筋書きも思い浮かぶ……。

数日後、個人経営の駐車場の管理人に案内されて現地に足を運ぶと、兄のクルマだという古い軽自動車のワンボックスカーが寂しげにたたずんでいた。1年間も乗っていなかったために、車体はほこりを被り、汚れていた。タイヤの空気圧も不足しているようであった。たぶんバッテリーはあがっており、エンジンは動かないだろう。

キーがないので鍵屋さんを呼んでドアを開けてもらい、ダッシュボードの中の車検証を見たら、車検は兄が亡くなったのと同時期に切れていた。

結局、Aさんは未払いの駐車場料金9万6千円を支払った。その上で、兄のクルマを手間と時間とお金をかけて廃車にした。これで遺産相続の収支は完全に赤字となった。

「兄さん、俺はあんたを反面教師に生きてきて、今、そこそこの幸せをつかんでいる。だから、それなりに感謝している部分はある。でも、今度もまた尻拭いをさせられることになった。弟としてはやるせない気分でいっぱいだよ。最後ぐらいはちゃんとしてほしかったな。今度墓参りにいったら、天国の父さんと母さんにみっちり叱ってくれるようお願いするつもりだからな。そこらへん、覚悟しておけよ」

Aさんはそう独りごちながら、いろんな感情がこもった涙を流したのであった。

故人所有のクルマも
遺産の一部

親や兄弟などが亡くなった後、一般的に、遺族は遺産相続や遺品整理などを行います。このときに忘れられがちですが、故人所有のクルマも遺産として考えなければなりません。大雑把に言えば、相続手続きをする故人の遺産の中にクルマも入れて考え、相続手続きをするということです。

ところが、今回のストーリーのように、故人所有のクルマが存在したにもかかわらず、遺族がそのことを知らなかったり、気付かなかったりするケースが稀にあります。これは、故人の生前に遺族との行き来が疎遠であること、また故人の住まいに駐車場が付帯しておらずクルマ自体を遺族が目にしていなかったこと、さらには故人が支払った自動車税納税の控え等が散逸していたことなどによって生じることが多いと思われます。

そして、遺産相続の手続きが終わってからクルマの存在が浮上した場合、遺族はそのクルマをどうするのか(相続して……使用するのか、売却するのか、廃車にするのか)を判断するのと同時に、多くの場合、滞納になっていた駐車場料金を精算する必要があります。

クルマの存在がわからなかった期間が長く、月額の駐車場料金が高ければ、精算のための費用は大きなものになります。今回のストーリーでの駐車場料金は、比較的抑えられた部類かもしれません。

また、廃車にするにしても手続きが必要で、それにかかる費用は数万円以上と考えられます(廃車依頼先の会社によって料金は異なります)。

今回のストーリーでは選択していませんが、クルマの状態が良ければ、相続した後にクルマを売却して、駐車場料金の精算や諸費用に充当するということも可能でしょう。

亡くなった肉親が放置していたクルマ。それも立派な“遺産”です!(前編)

亡くなった肉親が放置していたクルマ。それも立派な“遺産”です!(後編)

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