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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2018年9月25日更新
【今回のやっちゃったストーリー】
Eさん(36歳・会社員・独身)は大のドライブ好き。長い休みのときは、必ずといっていいほど愛車で日本各地を巡っている。
ときどき、ロングドライブになることもあるが、行程そのものも旅の魅力の一つなので、ぜんぜん苦にならない。フロントガラス越しの風景を眺めながら、「日本はほんとうに美し国だなぁ」といつも一人で悦にいっている。
そんなEさんだが、夏の休暇時に北陸のある観光地を訪れた際、想像もしていなかったアクシデントに見舞われてしまう。
早朝、交通がほとんどない街中の小さな交差点でのこと。青信号になり、ゆるゆると前進しだしたとき、左側の道路から信号無視のクルマが猛スピードで走ってきた。Eさん、とっさにブレーキを踏むも間に合わず、相手のクルマのテールに接触してしまった。ガシャーン。
Eさん、「信号無視だよ。なに考えてんだ!」と怒り心頭に。車外に出て相手の運転手に抗議してやろうと思ったのだったが、それより先に向こうの運転手と同乗者が外にでてきて、顔を真っ赤にしてこうまくし立ててきた。
「You are stupid! ◎△■×○♯ ▲▽☆*◆□」
相手はアジア系の外国人たちで、発しているのは英語と自国語らしい言語のチャンポンだった。Eさん、なにをいっているのか理解できなかったが、Eさんを責め立て、自分たちに非はないと主張していることはなんとなくわかった。
Eさん、「はあ?」と思ったのだったが、英語でしっかり反論することはできなかったので、とりあえず、相手をまあまあという仕草でなだめながら、拙い英語でこういった。
「ウエイト、ウエイト、アイ コール ポリス(待って、待って、私、警察、呼ぶ)」
警官が到着した後、Eさんが事故時の状況を説明するも、その外国人たちは相変わらず自分らの正当性を声高に主張していた。警官は多少は英語が話せたようだったが、Eさん同様、彼らの勢いに多少気圧された感じとなっていた。
困った雰囲気が漂いだしたが、そのとき、Eさんが旅の思い出づくりのために装着していたドライブレコーダーが役に立った。警官はドライブレコーダーを認めるや、ホッとした表情でそれを確認したのだった。
結局、相手のクルマが信号無視をしていたことが明かになった。外国人たちも最終的には「I’m sorry(ごめんなさい)」と謝った。そして、クルマの補償も、しっかりおりることがわかった。幸いなことに、外国人たちが乗っていたクルマはちゃんと保険がかけられているレンタカーだったのである。
しかし、Eさん、だからといって素直には喜べなかった。なぜなら、事故処理に数時間かかったうえ、応急処置的なヘッドライト修理などで丸1日を要し、計画していたドライブがほとんど台なしになってしまったからだ。
「いま、有名な観光地では、日本の交通ルールを熟知していない外国人旅行者のドライバーによる事故に巻き込まれる可能性が大きくなっている。これからはそういうことも意識しながら運転するようにしなくちゃいけないな」
ホテルの一室で、手持ちぶさたのEさんは一人まじめにそう自戒したのだった。
けっしてレアではない
外国人レンタカーとの事故
ここ数年、日本に観光にくる外国人の数が増え続けています。
2013年に1千万人を超えたかと思えば、2016年には2千5百万人近くにものぼりました。きたる2020年の東京オリンピックイヤーには4千万人ほどになるのではないかといわれています。
インターナショナルに日本の魅力が伝わりつつあり、経済効果も大きいことを考えれば、これは「喜ばしい現象」といえるでしょう。
しかし、同時に困ったことが起き始めているのも事実。たとえば、今回の事例のような外国人が運転するクルマによる事故の増加は、その代表的なことのひとつとして数えられます。
そう、Eさんが遭遇したような外国人ドライバー相手の事故は、けっしてレアなものではなくなってきているのです。
日本での運転が未経験でも
レンタカーが借りられる
困ったことですが、外国人観光客が運転するレンタカーが事故を起こしやすいというのは、実は当然といえる側面もあります。
なぜなら、外国からきた人たちは、日本の交通状況やルールに慣れていなくても、わりと簡単にレンタカーを借りて運転するようになっているからです(もちろん、日本人も簡単に諸外国でレンタカーを借りて運転しています)。
具体的にいうと、ジュネーブ条約締結国の人なら国際免許証とパスポートを、それ以外のスイス連邦、スロベニア共和国、ドイツ連邦共和国、フランス共和国、ベルギー王国、モナコ公国、台湾の人なら運転免許証とその翻訳分およびパスポートを提示すれば、たとえ日本における運転のキャリアが皆無であってもレンタカーを借りて運転することができるようになっているのです。
かつて、自分がしっかりと教習を受けたにも関わらず、免許取りたてのときにオロオロと公道を運転をしていたことを思い出せば、これがいかに事故に繋がりやすいことかが、よくわかると思います。
事後対策としては
ドライブレコーダーがGood
調べてみると、一応、国土交通省や自治体、全国レンタカー協会ほかの各レンタカー協会などが、貸出規則の遵守の徹底はもちろん、多言語注意看板(標識)の設置や外国人の運転を示すステッカー貼付、ETCデータを使ったピンポイント安全施策の立案など、さまざまな対策を講じはじめているということがわかりました。
たとえば、外国人観光客が急増し、その結果として外国人のレンタカー利用が増え、それによる事故件数も増えている沖縄県では、2015年に沖縄県レンタカー協会が「このレンタカーは外国の方が運転している」ということを知らせるマグネットステッカーを作成・導入しました。
これを前例とした取り組みは、その後北海道で行われ、徐々に全国各地で同様のステッカーが採用されはじめています。
マグネットステッカー(画像提供:沖縄県レンタカー協会)
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