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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2023年10月12日更新
前編のストーリーで、自分が起こした事故なのに当事者としての義務をまったく果たさず、妻のD子さんに身代わり出頭をさせたCさん。このCさんとD子さんは、どのような罪に問われるのでしょうか?
身代わり出頭は犯罪行為
身代わり出頭とは、実際に違反や違法なことを行った本人の代わりに、別人が警察などに「私が犯人です」と名乗り出る行為のことです。
こうした説明だけを見ると、「わざわざ犯人の身代わりになるなどということがあるのだろうか?」と思いますが、交通違反や交通事故などではときどき発生しており、過度なものはニュースになることもあります。
しかも、交通違反や交通事故などの身代わり出頭は罪の意識があまりない中で行われることが多いようです。
しかし、身代わり出頭はそれ自体が犯罪行為であり、身代わりとして出頭した人も、それを依頼した人も厳しく罰せられます。
身代わりに出頭した人は
犯人隠避罪に問われる
では、身代わり出頭はどのような罪に問われるのか具体的に見ていきましょう。
まず、身代わりとして出頭した人(前編のストーリーではD子さん)は、刑法の犯人隠避(いんぴ)罪に問われます。犯人隠避とは、隠れ場所を提供する以外の方法で、犯人の発見や逮捕を妨げることを指します。
「私が犯人です」と身代わり出頭することで、本当の犯人を隠し、捜査を混乱させたとされるわけです。
犯人隠避罪で有罪になった場合には、「3年以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されます。
前編のストーリーのように、被害者にちょっとしたはずみで軽傷を負わせてしまった交通事故があり、その当事者にかわって身代わり出頭したことで「3年以下の懲役または30万円以下の罰金」に問われるのは釈然としないと思う方がいるかもしれません。
けれども、救護措置義務違反はとても重い違反行為なのです。その犯人を隠避したということになると、これはやはり重く扱われると考えておかしくありません。
ただし、刑法には「親族による犯罪に関する特例」が設けられています。親族による犯人隠避について、家族を思う気持ちからそれを行ったとみなされる場合に、その刑を免除されるというものです(親族であれば必ず免除されるというわけではなく、裁判官の判断によります)。
前編のストーリーのD子さんは、こうした特例措置があるということを踏まえ、起訴されない可能性もありますし、起訴されても刑を免除される可能性もあります。
身代わりに出頭させた人は
犯人隠避の教唆の罪に問われる
次に、身代わり出頭を依頼した人(前編のストーリーではCさん)は、犯人隠避の教唆(きょうさ)の罪が問われます。
犯人隠避の教唆というのは、他人をそそのかして犯人隠避を決意させ、それを実行させることを指します。身代わり出頭という行為は、犯人から依頼されないのに起きることはまれなので、それが行われたのは犯人がそそのかしたからと考えられます。
その意味で、身代わり出頭を依頼した人(前編のストーリーではCさん)の責任は重大であるといえます。
刑法では、「人を教唆して犯罪を実行させた者」について「正犯の刑を科す」とされているので、犯人隠避の教唆の罪で有罪になった場合には、「3年以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されます。
前編のストーリーのCさんは、交通事故を起こした際に4つの義務をまったく果たしていませんでした。その中には、極めて重く扱われる救護措置義務違反が含まれています。そして、その義務違反の罪から逃れようと妻のD子さんをそそのかして身代わり出頭をさせました(犯人隠避の教唆を行いました)。
このように事態をかみくだいてみると、Cさんが起訴される可能性や、罪を問われて刑罰を科される可能性は大きいと考えられます。
交通事故を起こしてしまったとき、「相手が悪い」とか「たししたことはない」などと自己判断で決めつけ、後になって「まずいかも知れない」と誰かに身代わりになってもらう……これは最悪の選択だといえます。
前編のストーリーでいえば、時間を戻せるならば、Cさんは4つの義務を果たすことからやり直すべきであるといえるでしょう。
ひき逃げの身代わり出頭を妻に頼んだが……それがバレてしまった!(前編)
ひき逃げの身代わり出頭を妻に頼んだが……それがバレてしまった!(後編)
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