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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2023年1月26日更新
【今回のやっちゃったストーリー】
「もう別れましょ」
半年前、Vさん(28歳・会社員)はヨガインストラクターの妻から突然こう切り出された。彼女は慰謝料として数百万円の支払いも要求してきた。
原因はVさんにあった。会社の同僚女性と深い仲になり、関係が1年以上続いていたところ、彼女とのLINEでの浮ついたやりとりが妻に見つかってしまった。Vさんは多少の事実をごまかしつつ浮気を認めて謝罪したが、それで許されることはなく、離婚要求を突き付けられたのだった。
Vさんはまだ妻を愛していたし、いつか2人のあいだに子どもをもうけることも考えていたので別れたくはなかった。また、安月給の身の上であり、貯金も十分でなかったため慰謝料も払いたくなかった。いや、払えなかった。そこで、「同僚女性との関係をきっぱり断つ」ふりをするのを手はじめに、あれやこれやと妻の懐柔を図った。
そのかいあってか、数ヵ月後に妻は会話を普通にしてくれるようになった。しかし、効果はそこまでで、彼女の離婚の意思にまったく変化はなかった。それどころか、「近々、親の援助を得て弁護士を雇い、正式に離婚訴訟を起こすつもり……」とまで言い出した。
その頑なな姿勢に困惑しつつ、Vさんはなおも諦めずに懐柔の努力を続けた。一方で、離婚せざるを得ない状況になることも考え、慰謝料の支払いに備えて無駄な出費を抑えながら貯金を殖やすこともはじめた。
物事を両天秤にかけながらしたたかに行動するVさんだったが、ある日、さらなる悲劇が彼を襲う。
ショッピングセンターで買い物をするため、妻を助手席に乗せてクルマを走らせていたときのこと。もう少しで目的地に着くというところで、突然、妻がこう言った。
「あなた、例の女とまだ付き合ってるでしょ?」
Vさんは驚愕した。(なぜバレたのだろう……)。LINEのやりとりは毎回消していたし、確かな証拠はどこにもないはず。もしかして離婚訴訟を有利にするためのブラフなのか……。発言の根拠がわからなかったので、Vさんはひたすら否定の言葉を連ねた。「いや、そんなこと絶対にしてないから」「今は君一筋だから」などとその場を必死で取り繕った。
「そんなこと言ってもムダよ。私、探偵に調べてもらったのよ。ばっちり、証拠写真もあるからね!」
妻の口から放たれたその言葉に、「えっ!」と驚き、思わずVさんが助手席の妻の方を向くと、妻は決定的瞬間をとらえた画像を表示したスマホ画面をVさんにグッと突き出した。そのとき、ドン!という衝撃がクルマ全体に走った。Vさんは、信号待ちのクルマに追突してしまったのだった。
この追突事故はVさんに100%の過失責任があった。そのため、相手側の損害と自分のクルマの損害についてはVさんが費用負担しなければならなかったが、それは自動車保険で賄うことができた。
また、この事故で、妻は鎖骨骨折の重傷を負って近隣の総合病院に入院することになった。退院までには3ヵ月を要するという。当然のことながら、妻の治療費はVさんが払わなければならなかったが、その額は自賠責保険だけでは支払えない金額だった。
絶対絶命のピンチ!……が、これも自動車保険の人身傷害保険を使うことでなんとか切り抜けることができそうだった。
「ああ、自動車保険に入っていて本当によかった……」
だが、妻との離婚はもはや回避できない状況になっていた。浮気の動かぬ証拠をつかまれ、さらに事故の精神的ダメージも拍車をかけていた。
妻は弁護士を立てて、Vさんに離婚を迫ってきた。その条件には最初の金額をはるかに上回る慰謝料が含まれていたが、さすがにそれは自動車保険の対象外であり、Vさんの貯金をすべて差し出しても足りない額だった。
「分割払いを認めてもらうしかないかな……」
懐が火の車となったVさんが、浮気の継続もままならない状態となったのは言うまでもない。
交通事故の際に
同乗者を守る保険は?
自動車保険の契約内容について考えるとき、「自分(保険契約者)が運転するクルマで事故(自損事故を含む)を起こした際に、同乗者がケガをしてしまった」という事態に備えることを考慮したことはあるでしょうか?
つまり、「同乗者の“もしも”に備える」という視点ですが、これについて意外に深く考えていないのではないでしょうか。
交通事故における同乗者の損害を補償してくれる自動車の保険は次の4つです。
①「自賠責保険」
②「任意保険の対人賠償保険」
③「任意保険の人身傷害保険」
④「任意保険の搭乗者傷害保険」
続く後編で、これらの保険の中身について見ていくことにしましょう。
追突して助手席にいた妻がケガ……その治療費は保険で賄えるの?(前編)
追突して助手席にいた妻がケガ……その治療費は保険で賄えるの?(後編)
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