ロータスクラブが運営するクルマとあなたを繋ぐ街「ロータスタウン」

みらいのくるまの「ただいまのところ」情報

ALL JAPAN EV-GP SERIES 2023 プレビュー(後編) 「打倒モデル3」を目指す日本の自動車メーカーのEVは参戦してくるのか!?

2023年4月18日更新

2023全日本EVGPプレビュー2_1

※画像は2022シーズンのもの(以下同様)



前編に続いて、4月22日(土)に筑波サーキットで開幕するALL JAPAN EV-GP SERIES(全日本電気自動車グランプリシリーズ)2023シーズンのポイントを見ていこう。

打倒モデル3
三つの可能性

さて、二つ目のポイントである、②「モデル3に勝てる電動車は現れるのか?」についてはどうだろ
う。

JEVRAの富沢久哉事務局長は以下の三つの可能性を示してくれた。

【A】「昨年から日本の自動車メーカー系のチームが、ALL JAPAN EV-GP SERIESでモデル3に勝つことを目標にして参戦用のEVをつくりはじめている。出来上がれば今シーズン中にも参戦してくる可能性がある」

【B】「今年の初めに日本の自動車メーカーに勤める社員たちで構成された同好会チームが参戦の意向を示してきた。EVの車種や参戦時期など詳細は不明だが、今シーズン中の参戦は十分にあり得る」

【C】「数年前からスポット参戦しているGulf RacingのKIMI(八代公博)選手が、爆速のテスラ モデルSプラッドをオーダーしており、納車されればすぐに参戦してくる可能性がある」

どれも実現すれば、ALL JAPAN EV-GP SERIESに新しい局面をもたらすだろう。

日本のトップメーカーが
コンバートEVで参戦!?

【A】について、富沢事務局長は参戦してくるのがどのメーカー系なのか、社名は明かしてくれなかった。

ヒントとして「彼らは日本有数のメーカーのプライドを賭けてモデル3に勝とうとしている」とだけ教えてくれた。

どうやら、参戦してくるのはトップレベルの自動車メーカー系チームらしい。

では、彼らはどんなEVを投入してくるのか。これに関しても富沢事務局長は言葉を濁したが、「自社のエンジン車をコンバートしたEVになるようだ」との情報はもらえた。

それを聞いたとき「果たしてコンバートEVでモデル3に勝てるのか」との素朴な疑問を持った。ただ、言葉で「エンジン車をコンバートしたEV」と言っても、いわゆるコンバートEVなのか、あるいはプロトタイプ的なニュアンスで組み上げられたEVなのかはわからない。レースを面白くするために、できれば後者であってほしい。

この自動車メーカー系チームが、2023シーズンのいつごろ参戦してくるかは今のところ未定。車両の出来具合で参戦が翌シーズンに持ち越される可能性もなくはないという。

モデル3に勝つために万全を期す気持ちはわからないでもない。しかし、世には「モータースポーツは走る実験場」という言葉があり、「叩いて壊してやがて勝つ」という考え方がある。最初のうちは負けて恥をかくことを厭わず、早めの参戦を願いたい。

同好会的なチームも
密かに爪を研ぐ!?

【B】の可能性は、気軽な同好会の体なので、参戦時期は未定ながら、クルマとチーム体制が揃い次第参戦が実現しそうだ。ただ、そうなったとしても、すぐにモデル3に勝つということは難しいかもしれない。

昨シーズンを振り返ってみると、部品メーカー・武蔵精密工業のチームが自社でEVにコンバートしたMuSASHi D-REV シビックEVRで参戦し、マツダの系列会社であるマツダE&Tが自社のEVであるMX-30を持ち込み参戦してきている。

両社とも、レースでしっかり完走してそれぞれのクラスで好成績を上げているものの、優勝争いには踏み込めていない。どちらかというと、レースから得たデータを自社の研究開発に役立てる活動に重きをおいている様子だ。モデル3に勝ち、総合優勝を果たすのは、その延長線上にある将来的な目標もしくは夢となっている。

2023全日本EVGPプレビュー2_2

2023全日本EVGPプレビュー2_3

おそらく、【B】の同好会チームも同様のスタンスで活動するものと思われる。そうなると、モデル3にはしばらくのあいだは勝てないだろう。ただ、「大元がちょっと尖ったことをする面白いメーカー」(富沢久事務局長)とのことで、意外に早く見どころをつくってくれそうな期待感はある。

参戦後の同チームの動向に注目したい。

爆速のモデルSプレイドは
車両の重さが懸念材料

最後の【C】は八代選手がモデルSプレイドをいつ手に入れるかがポイント。入手し即参戦すれば、それはそのままモデル3の脅威となりそうだ。

2023全日本EVGPプレビュー2_4

モデルSプレイドは最高速度322㎞/h、0-100㎞/h加速2.1秒。モデル3の最高速度261㎞/h、0-100㎞/h加速3.3秒をそれぞれ大きく上回る。

短い距離の予選なら十中八九モデルSプレイドがポールポジション獲得となるはずだ。

決勝でもその速さは際立ち、サーキットの直線ではモデル3に抜かれることはまずないだろう。

問題があるとすれば、車重の大きさである。

モデルSプレイドの車重は2,162kgで、モデル3の1,800kg前後と比較して400kg近くも重い。幾度ものコーナリングにおいて軽いモデル3に詰められる可能性は十分にある。それに、アクセル全開を続ければモデル3より重い分、早くバッテリーの過熱が生じて加速抑制が効いてしまうことも考えられる。

実際、2020シーズン当初に参戦していた最高速度260km/h、0-100㎞/h加速2.8秒、車重2,330kgのポルシェタイカン ターボSがそうだった。どのレースでも予選でポールポジションを獲得し、決勝の序盤ではモデル3を寄せ付けない圧倒的な速さを見せた。だが、重い車体がネックとなり、各コーナーではじりじりと差を詰められ、中盤あたりからはバッテリー過熱の加速制御が効きズルズルと後退する展開になっていた。結局、ポルシェタイカン ターボSは一度も優勝しないまま参戦を取りやめている。

果たして結果はどうなるか。テスラという同じ血を分けた車両同士の戦いの行方が楽しみで仕方がない。

● ● ●


今、時代の風に押されて、力のある自動車メーカー系のチームが、次々にEVレースに関心を示す状況が生まれてきている。そして、市場にはレースでモデル3を凌駕しそうなEVもポツポツ出はじめている。

これらが参戦してくれば、ALL JAPAN EV-GP SERIESの上位争いは大きく様変わりすること必至だ。近接した実力の車両同士の、より高度なレースの実現が期待できる。これは、観戦を楽しむ側にとっても大歓迎である。

2023シーズンのALL JAPAN EV-GP SERIESは、いわばその前哨戦。各サーキットでの生の観戦をぜひおすすめしたい。

ALL JAPAN EV-GP SERIES 2023 プレビュー

(前編) 絶対的な強さを誇るTeam TAISANのモデル3を打ち負かすモデル3はいるのか!?

(後編) 「打倒モデル3」を目指す日本の自動車メーカーのEVは参戦してくるのか!?

  • ロータスカードWeb入会
  • ロータスカードWeb入会
  • 店舗検索
  • 店舗検索
  • 楽ノリレンタカー
  • 楽ノリレンタカー

あわせて読みたい

  • BookReview(29)『2035年「ガソリン車」消滅』―EV派vs.反EV派の論争は2050年の脱炭素実現を見据えて行うべし!

    みらいのくるまの「ただいまのところ」情報

    BookReview(29)『2035年…

    衝撃的なタイトルは事実を端的に表しただけ『2035年「ガソリン車」消滅』というタイトルは、一見すると危機感を煽っているように思える。だが、これは煽りでも何…

    2021.09.08更新

  • BookReview ⑦『自動車会社が消える日』~日本のメーカーのEV化はまあまあだが、自動運転化はイマイチ!

    みらいのくるまの「ただいまのところ」情報

    BookReview ⑦『自動車会社が消…

    刺激的なタイトルには裏づけがある『自動車会社が消える日』とは、なかなか刺激的なタイトルだ。いったい、どういうつもりでこんなタイトルをつけたのだろうか?著者…

    2018.02.28更新

  • 第27回 日本EVフェスティバル レポート③ ―「百万台EVプロジェクト」で、楽しく地球温暖化対策に乗り出そう!

    みらいのくるまの「ただいまのところ」情報

    第27回 日本EVフェスティバル レポー…

    日本EVクラブの舘内端代表は、今回の日本EVフェスティバルのパンフレットに「地球温暖化は私です」という一文を寄せていた。そこには、こんな記述がある。「世界の…

    2021.12.09更新

  • 【ルポ】日本EVクラブ『電気自動車EVスーパーセブンで東北被災地を巡る旅』③・・・「東北の人たちがEVに乗れば震災支援の恩返しができる」(柴山明寛)

    みらいのくるまの「ただいまのところ」情報

    【ルポ】日本EVクラブ『電気自動車EVス…

    災害大国にはEVが不可欠日本は災害大国だ。頻発する地震だけでなく、近年は異常気象の影響で台風や集中豪雨といった災害も増えている。国連大学が、世界171ヵ国…

    2018.06.26更新

  • 2017年の注目ニュース② 自動運転の最高位が「レベル5」になるらしい。

    みらいのくるまの「ただいまのところ」情報

    2017年の注目ニュース② 自動運転の最…

    このコーナーで昨年(2016年)の6月、「自動運転車は技術の度合いに応じて区分がレベル1からレベル4まである」と書いた。ところが、その半年後となる12月、その区…

    2017.03.13更新

  • 『EVOCカンファレンス2019 in HAKONE』レポート(後編)ちゃんとした大人たちのノブレスオブリージュこそEV普及のカギである

    みらいのくるまの「ただいまのところ」情報

    『EVOCカンファレンス2019 in …

    『EVOCカンファレンス2019inHAKONE』で行われた講演の多くは、各団体・企業が現在取り組んでいる電動車普及のための最新の施策などを紹介していたのだ…

    2019.10.10更新

< 前のページへ戻る