ロータスクラブが運営するクルマとあなたを繋ぐ街「ロータスタウン」

みらいのくるまの「ただいまのところ」情報

BookReview(38)『EVショック』―CHAdeMOが頑張れば、日本のEV化はもっとスムーズに進む!

2023年4月11日更新

書評_EVショック_1

著者の高橋優氏は日本初のEV専門自動車ジャーナリスト。日本で発売されているEVの性能を徹底検証するYouTubeチャンネル『EVネイティブ【日本一わかりやすい電気自動車チャンネル】』を運営・公開している。

『EVネイティブ』というチャンネル名は、著者が免許を取得してから日産リーフやテスラ車といったEVしか所有してこなかったことからきている。つまり、エンジン車を知らない生粋のEVっ子が、クルマ=EVと見なすことを普通としながら、世のEVの良しあしを真摯に語るチャンネルとなっているのである。

このチャンネルの登録者数は2023年3月時点で約5万人。名物企画の1000㎞チャレンジなどがEVオーナーやEVに関心を寄せる人たちに好評を博していて、視聴回数は常時1万前後、多いときには20万以上にも上る。

これまでにないタイプの自動車ジャーナリズムが発生・進行しているといえるだろう。

現在、自動車業界が100年に一度の変革期を迎える中で自動車ジャーナリストの在り方も大きく変わろうとしているわけだが、著者はそれを先駆けて体現しようとしている1人なのである。

CHAdeMO充電器は
非常に使いにくい!?

そんな先鋭的な著者による本書は『EVショック ガラパゴス化する自動車王国ニッポン』というタイトルが示すとおり、欧米や中国に比して日本がいかにEV化に遅れているかを追及する内容となっている。

EV化の遅れに関しては、近年、ほかの書籍でも多く語られているため、その面においての新味はあまりない。

だが、ほかの書籍ではEV化の遅れの原因として主に日本の自動車メーカーの対応のまずさをあげているところ、本書はそれに加えてCHAdeMO規格の充電器の性能と展開の不十分さも大きな要因のひとつとしてあげており、その批判と提言にかなり多くの頁を費やしている。この部分については、かなり独自性があるといえる。

以下は、その批判と提言の数々の要約である。

「欧米では長い航続距離を誇るEVに対しても素早く充電ができるよう350kW級の急速充電器の配備が進んでいる。ところが日本のCHAdeMO規格の急速充電器のほとんどが40kW級以下にとどまっている。なんとかすべきである」

「現在、CHAdeMO規格の90kW級の急速充電器の増設が進められている。しかし、その数はまだ圧倒的に少ないのが実情。もっと早い展開が待たれる」

「1回の充電時間の30分間制限は非常に不便。制限の撤廃を望みたい」

「1ステーションにわずかな充電器しかないため渋滞充電が起こりやすい。増設を急ぐべきだ」

「CHAdeMO規格の充電コネクターは非常に重く非力な女性は扱いにくい。改善を望みたい」

「充電カード認証による利用はひどく面倒。充電プラグを差しただけで決済できる機能を実装すべきだ」

「時間で決める料金体系はおかしい。従量制ベースにすべきだ」

「充電終了後の放置EVを少なくするために、追加課金システムを導入すべきだ」

「日本に流通するEVの充電性能は、CHAdeMO規格の充電器の不十分さに合わせてダウンを余儀なくされている部分がある。この悪しきサイクルはぜひともなくしてほしい」etc.

非常にわかりやすくかつ説得力がある指摘の数々。日本のEV化について少しでも関心がある人なら、この部分は必読だろう。

2023年のおすすめEVは?

本書には、日本のEV化の遅れを厳しく追及する記述が多い一方で、バイヤーズガイド的な記述も少なからずある。

以下は、その一例だ。

〈EVのバッテリー交換が必要になると莫大な維持費がのしかかってくるのではないか、というバッテリー劣化問題が、EV購入の大きな心理的ハードルとなっている方も中にはいらっしゃるかもしれません。―略― (しかし)バッテリー温度を最適に調整できるバッテリー温度管理機構を搭載するEVに対しては、(その懸念は)もはや当てはまりません。―略― 現在発売されているほとんどのEVには(このバッテリー温度管理機構が)すでに搭載されており、EV普及の大きな要因になっています〉

こういった記述を重ねた上で、著者は、最終章において2023年のおすすめEVのトップ5を披露するというサービスまで行っている。

いったい、トップ5はどんな5台なのか。

ずばり明かすと、それはアウディのQ4 e-tron、日産のサクラ、テスラのモデル3、テスラのモデルY、BYDのDOLPHINというラインナップである。

それぞれ異なるセグメントのEVなのだが、著者は走行性能や航続距離はもちろん、充電の利便性、補助金を含めた価格のリーズナブルさなど、セグメントごとのユーザーメリットも十分に加味した上での実用的なセレクションを行っている。まさにEVネイティブならではのセレクション。EV購入を検討中で著者の見識を支持する人なら大いに役立つガイドとなるだろう。

ちなみに著者は、この5台の中から、最もおすすめしたい1台の名もあげている。

それはどのEVなのか。

それはここでは明かさない。非常に意外な1台とだけいっておく。ぜひ本書を購入し、そのベスト1のEVの名を確かめてほしい。

書評_EVショック_2

『EVショック ~ガラパゴス化する自動車王国ニッポン』
・2023年2月6日発行
・著者:高橋優
・発行:小学館
・価格:990円(税込)

  • ロータスカードWeb入会
  • ロータスカードWeb入会
  • 店舗検索
  • 店舗検索
  • 楽ノリレンタカー
  • 楽ノリレンタカー

あわせて読みたい

  • EVキーマンに聞く/CHAdeMO協議会 姉川尚史会長 ③「取り急ぎ、高速道路SA・PAの充電渋滞の解消に向けて頑張っています」

    みらいのくるまの「ただいまのところ」情報

    EVキーマンに聞く/CHAdeMO協議会…

    姉川氏へのインタビュー第3話は、2019年10月に設立された株式会社e-MobilityPower(イーモビリティパワー、姉川氏は取締役会長を務める)が取り組…

    2020.03.19更新

  • 2020全日本EVグランプリシリーズ第7戦 レポート③ – 有終の美。地頭所選手が鬼の走りで前人未踏の3連覇を達成した!

    みらいのくるまの「ただいまのところ」情報

    2020全日本EVグランプリシリーズ第7…

    白煙が立ちこめるもスムーズなスタートさて、決戦のときである。午後3時15分、富士スピードウェイを11周50㎞にわたって競い合う決勝レースが始まった。グリ…

    2020.12.10更新

  • 「東京モーターショー2019」レポート(4) 三菱は進化形のPHEVシステムや電動4WDでSUVを過激に変えていく!

    みらいのくるまの「ただいまのところ」情報

    「東京モーターショー2019」レポート(…

    ロータスクラブと提携している三菱自動車のブースにEVの姿はなかった。だが、PHEVの現行車やコンセプトカー展示に加え、V2H機器で家と電動車を繋ぎ、太陽光で発…

    2019.11.07更新

  • BookReview(32)『EV イブ』―日本の電動化施策からハイブリッド車を除外せよ!

    みらいのくるまの「ただいまのところ」情報

    BookReview(32)『EV イブ…

    電気自動車=EVを題材にした経済小説である。主人公は、経済産業省の若き官僚・瀬戸崎啓介。日本の自動車産業がEVへの移行に著しく立ち遅れている現状を憂う人物だ。…

    2022.03.24更新

  • みらいのくるまルポ~『東京ロボット』:EV時代の刺激的アプローチ!

    みらいのくるまの「ただいまのところ」情報

    みらいのくるまルポ~『東京ロボット』:E…

    IT企業がEV開発に挑戦いま、世界中で自動車メーカー以外の企業がEV(電気自動車)の開発・販売に積極的に乗りだしている。それは日本においても同様。9月29日…

    2017.11.02更新

  • 『第25回日本EVフェスティバル』ルポ② 青年はEVマシンを駆るプロレーサーの夢を見る!

    みらいのくるまの「ただいまのところ」情報

    『第25回日本EVフェスティバル』ルポ②…

    電気カート(ERK)やコンバートEVでレースに挑む人たちの中には、エンジンが載ったマシンでもレースに参戦しているという人もいる。彼らの胸中には、「EVは好きだけ…

    2019.12.05更新

< 前のページへ戻る