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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2020年1月17日更新
「100年に一度の変換期」の真の意味
いまの自動車産業界は「100年に一度の転換期」にあり、そのキーワードは「電動化」「自動化」「コネクテッド化」「サービス化」の四つだといわれている。
これを受け、本書は以下のような構成でそれらキーワードを一つ一つ深掘りしている。
〈第1章 クルマがこのままでは立ち行かない理由〉……現在の自動車産業の問題点と「転換」の必要性について
〈第2章 すべてのクルマはEVになるのか〉……世界的に加速しているクルマの「電動化」の現状と将来的な普及見込みについて
〈第3章 ドライバーのいらないクルマはいかにして可能になったか〉……急速に進化する「自動化」の技術とそれにともなう「コネクテッド化(ネットで繋がる)」の流れについて
〈第4章 自動車産業の未来〉……これからの自動車産業で重要となってくるとされるシェアリングサービスや無人タクシーサービス、車内エンターテイメントサービスといった新しいビジネス=「サービス化」の胎動について
この本、新書らしく、どの章も独立した内容となっている。だから、どこから読んでも問題なく読み進められる。だが、できれば最初から最後まで通して読んだ方がよいだろう。なぜなら、そうすることで「電動化」「自動化」「コネクテッド化」「サービス化」が、実はひとつの流れの中で緊密に繋がっていることがよく見えてくるからだ。
われわれ一般のドライバーは、未来のクルマと聞くと、たとえばEVのことと自動運転車のことを個別に思い浮かべがちなわけだが、それは誤った捉え方であると気付かされるのだ。
すなわち、「電動化」があっての「自動化」であり、「自動化」があっての「コネクテッド化」であり、それら全てがあっての「サービス化」なのであって、どれか一つを抜いても未来のクルマは語れない。
それぞれの普及には多少の時間差があるにせよ、いま、それらの動きが一気にドッと押し寄せているからこそ、「100年に一度の転換期」なのである。
近々「EVのほうが得だから」で
加速度的普及がはじまる
各章のなかで、とくに興味深く読めるのは、やはり色濃く現在進行形の状態にある「電動化」を扱っている第2章と、「自動化」に触れている第3章だろう。書かれている内容がとにかくリアリティに溢れている。
たとえば、われわれは「今後EVは加速度的に普及するといわれているけど、ガソリン車よりもかなり車両価格が高いという事実を考えれば、なかなかそうはいかないんじゃないの?」などと思ったりするわけだが、著者はそれに対し、テレビのブラウン管が急激に液晶に入れ替わっていった事実を引き合いに出しながら、EVの価格低下とそれにともなう加速度的普及の可能性の大きさを示してくる。
1990年代初頭に対角10インチの液晶パネルの製造コストが50万円以上もした時代に、ある技術雑誌が「1995年には10分の1の5万円に下がる」と予測し、業界関係者が皆「とても無理だ」と思っていたにもかかわらず、結局このコスト目標は、1~2年遅れではあるが達成された。(中略)その後、液晶テレビのコスト低下は関係者の予想を上回るスピードで進み、(中略)単位面積当たりの価格では約100分の1に下がった。
技術の世界では業界関係者の中である種の共通認識ができ、そこに多くの経営資源が投入されてしまうと、いわば目標が自己実現的に達成されてしまうことがある。
EVの車両コストが2025年にはガソリン車と同等に下がるとBNFE(編集部付記:ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナインス)は予測している。こうなると環境のためとか、政策のため、という段階を超え、「EVのほうが得だから」という経済原理の観点からEV化が進むようになるだろう。いったん業界の共通認識ができ、「目標の自己実現サイクル」に入ると、そこから先は、もう理屈の世界ではなく、こうしたコスト目標自体が目的化する。(『EVと自動運転』より)
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