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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2024年4月11日更新
T型フォードの大量生産がはじまった1908年あたりから、CASE化が加速する現在に至るまで、自動車はどのように進化を遂げてきたのか。
本書は、その約100年にわたる歴史をなぞっている。
普通の自動車史と違うのは、各メーカーのエポックメーキングなクルマを、技術進化の視点からではなく、国際情勢の動向と絡めながら紹介している点だ。
全編をとおして、政策と自動車、戦争と自動車、エネルギーと自動車、グローバリゼーションと自動車、環境と自動車などなど、ハイブロウな記述が続いている。
とはいえ、そう難解な本ではない。記述自体が平易な上、“歴史書”だけにトリビア的な発見も多数あり、結構楽しく読み進められる。
スズキのインド進出は
小さな政府の流行から!?
例えば、1957年に登場したイタリアのフィアット500(チンクエチェント)ヌオヴァ。
この名車は、前年に起きたスエズ危機と石油価格の高騰の影響を受けて生まれた1台なのだという。
丸みを帯びた小さくかわいいデザインは鋼板の面積を減らすための工夫で、RRはエンジンの動力を駆動輪に伝える部品を節約するための工夫。揺らぐ国際情勢が小さくて安価なクルマの開発を後押ししたのであった。
例えば、1981年にいち早くインドに進出したスズキ。
この動きは、80年代に西側諸国で流行した小さな政府≒新自由主義が色濃く影響した結果なのだという。
スズキはもともと質素倹約を是とするメーカー。そこに小さな政府的な価値観が加わり、当時まだGDPが小さかったインドで小さく勝負することをよしとし、結果、大きな成果を得るに至った。現在の成長著しいインドにおいて地歩を築いているのは、決して偶然の賜ではないのであった——。
こうした世情と絡めながらの自動車への理解は、現代そして将来においても変わらず重要だと著者は説く。
〈(二一世紀の特徴は)環境規制の強化と環境技術の進化、そしてこれをも包括するCASE(つながる、自動化、シェア、電動化)の加速である。そこでは単にガソリン車やハイブリッド車の燃費向上や品質向上だけではなく、車の新しい使い方、所有の形、作り方など、新しいライフスタイルを提案する力が求められる。技術開発を支える理系力は今まで以上に必要だが、同時にこれをどこでどのように発揮させるか考え、見つけ、新しいストーリーを紡ぎ出す力、これを世間に的確に伝えて世論を作る文系力が求められる〉
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