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BookReview(36)『2023年版 間違いだらけのクルマ選び』―新型クラウンは素晴らしい。でも、サクラとeKクロスEVもすごくいい!

2023年1月12日更新

2023年版 間違いだらけのクルマ選び_1

新型クラウンの出来に
故・徳大寺氏もうなる!?

2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤーは、画期的な軽EVの日産サクラと三菱eKクロスEVに決まった。

これは、審査員(=自動車評論家)60人のうち3分の1以上に及ぶ23名が最高評価点の10点を付けた結果である。

しかし、審査員の1人であり、この本の著者である島下泰久氏の評価は違った。氏はトヨタのハイブリッド車である新型クラウンに10点を付けている。この本でも「今期のベスト3台」の1台に新型クラウンの名を挙げている。

いまさらクラウン、いまさらハイブリッド車の感はなくもない。なぜこういう選考に至ったのか。

かねてより氏は〈真の意味でカーボンニュートラルを目指すならば、性急なBEVへのシフトだけが採るべき道ではない〉と語っている。

そうした確固たる考えのもと、氏はハイブリッド車である新型クラウンが、日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考基準である「コンセプト、デザイン、性能、品質、安全性、環境負荷、コストパフォーマンス等」の面でどのクルマよりも優れていると判断し、最高評価の10点を付けたのである。

ハイブリッド車ありきの電動化推進の良し悪しは別問題として、その評価姿勢はしっかりとした思想を持つ自動車評論家として至極まっとうだといえる。

氏が新型クラウンをどれほど褒めたたえているかは、本書で直接確かめてもらいたい。

あえてひとつだけ明かしておくと、氏は『間違いだらけのクルマ選び』の初代執筆者である徳大寺有恒氏が存命ならば、きっとこのクルマを欲しがっただろうとの論を展開している。つまり、新型クラウンは通をもうならせる1台に仕上がっているというわけである。

サクラとeKクロスEVは
間違いなくいいクルマ

島下氏は別にBEVを毛嫌いなどしていない。現実を見据え、性急なBEVシフトに懸念を示しているだけだ。新しく登場したBEVがいいクルマならば、きちんと褒める懐の深さを持っている。

事実、日産サクラと三菱eKクロスEVも高く評価している。

日本カー・オブ・ザ・イヤーでは次点に相当する6点を付与している。本書では以下のような賞賛の文章を連ねている。

〈その走りっぷりは、これまでの軽自動車の常識、先入観を覆すものと言える。加速は静かで滑らかで力強く、高剛性かつ低重心のシャシーは何より乗り心地が上質。―略― 走りはとにかく気持ち良く、軽快で、何より疲労感が既存の軽自動車とは比較にならないほど小さい〉

〈サクラではプロパイロット、eKクロスEVではマイパイロットと呼ばれる運転支援機能も備わる。思わず遠出したくなってしまう仕上がりだ〉

両車のマイナスポイントとしては、バッテリー容量が小さくて長距離走行に向いていないことを挙げている。だが、それも充電インフラが不十分な中での高性能BEVゆえの悩みだとしている。
〈これだけの高速性能とプロパイロット/マイパイロットがあれば、それは長距離ドライブに行きたくなるだろう。そこが悩ましい。―略― 悩ましいところはあるが、間違いなくクルマはいい。正しいというか、あるべき使い方でこのクルマを活かすユーザーが増えて、じわりとモビリティの電動化が進んでいく、そんな流れに期待したい〉

今、カーボンニュートラルに向けて、さまざまなパワートレインのクルマが混在しはじめている。そのため、ユーザーのクルマ選びは、これまで以上に難しくなっている。

そんな中、この『間違いだらけのクルマ選び』は現実と理想の両方をしっかり見据えた上で、“いいクルマ選び”を提案してくれている。その役立ち度は、徳大寺氏が執筆していたときのレベルに匹敵するといっても過言ではない。一読をおすすめしたい。

2023年版 間違いだらけのクルマ選び_2

『2023年版 間違いだらけのクルマ選び』
・2022年12月29日発行
・著者:島下泰久
・発行:草思社
・価格:1,760円(税込)

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