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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2023年9月19日更新
今回のやっちゃったストーリー
Fさん(40歳男性・会社員)は、人生なにごとも石橋を叩いて渡るタイプ。
もちろんクルマの運転はつねに安全第一で、ずっと無事故無違反をとおしてきた。しかも、「いろんな人が通行する道路上では、もらい事故も起こり得る」と、任意保険の車両保険はフルカバータイプを契約している。
そんなFさんだが、ある日、まったく想定していなかった事故の報に接することになってしまった。警察から「お宅の10歳の息子さんが自転車で歩道を歩いていた高齢のおばあさんにぶつかって、ケガさせてしまった」という電話があったのだ。
当初、Fさんはかなり動揺はしたものの、「子どもが起こした自転車の事故だから大したことはないだろう」と高をくくるところがあった。だが、病院に駆けつけてみると背骨を折る大ケガと判明。悪くすると、おばあさんは寝たきりになるかもしれない様態だった。
Fさんは愕然とした。おばあさんに対する申し訳なさに加え、おそらく相当額にのぼるであろう賠償金に関する不安が胸中に広がった。自分はしっかりと自動車保険に入っているにもかかわらず、よもや10歳の息子が自転車でこんな大きな事故を起こすとは考えていなかったために自転車保険には加入させておらず、賠償金のすべてを自分の貯金などで賄うなければならないのだ――。
思わぬところで人生の石橋が崩れはじめたFさん。「こんちくしょうめ」と、普段は絶対使わない汚い言葉で自分のうかつさを激しく責め立てたのであった。
小学生が起こした事故でも数千万円の賠償が
Fさん、クルマの事故に関しての保険は万全だったのに、子どもが乗る自転車の事故に関する保険のことはまったく考えていなかった……。それは、本当にうかつなことでした。
グラフにもあるとおり、自転車が起こす対歩行者の事故の件数は毎年3000件近い数値で推移しています。しかも、そのなかには相手に後遺症を与える事故、死亡事故が少なからず起こっています。
自転車の乗り物としての危険性をけっして甘く見てはいけないのです。
もし、そうした重大事故を法律違反をおかしたなかで起こせば、刑事上の責任と民事上の損害賠償責任が発生します。事故を起こした者が小学生である場合には、本人にこれら責任は問われないものの、その代わりに監督責任のある親に対して損害賠償請求が行われることになります。
ときに、その額は莫大。下の表にあるように、2013年、男子小学生(11歳)が歩行中の女性(62歳)に頭蓋骨骨折等の傷害を負わせて意識が戻らない状態にした事故の裁判では、9,521万円の賠償を命じる判決がだされているほどです。
〈自転車での加害事故例〉
判決認容額 9,521万円
男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路において歩行中の女性(62歳)と正面衝突。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となった(神戸地方裁判所、2013年7月4日判決)。
判決認容額 9,266万円
男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前の歩道から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突。男性会社員に重大な障害(言語機能の喪失等)が残った(東京地方裁判所、2008年6月5日判決)。
判決認容額 6,779万円
男性が夕方、ペットボトルを片手に下り坂をスピードを落とさず走行し交差点に進入、横断歩道を横断中の女性(38歳)と衝突。女性は脳挫傷等で3日後に死亡した(東京地方裁判所、2003年9月30日判決)。
判決認容額 5,438万円
男性が昼間、信号表示を無視して高速度で交差点に進入、青信号で横断歩道を横断中の女性(55歳)と衝突。女性は頭蓋内損傷等で11日後に死亡した(東京地方裁判所、2007年4月11日判決)。
判決認容額 4,043万円
男子高校生が朝、赤信号で交差点の横断歩道を走行中、旋盤工(62歳)の男性が運転するオートバイと衝突。旋盤工は頭蓋内損傷で13日後に死亡した(東京地方裁判所、2005年9月14日判決)。
※引用:日本損害保険協会のHP
※判決認容額とは、判決文で加害者が支払いを命じられた金額(上記金額は概算額)
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