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クルマのトラブル「もしも」マニュアル
2019年3月26日更新
【今回のやっちゃったストーリー】
運転歴20年のKさん(40歳男性・機械メーカー勤務)。クルマ関係のことは人よりもよく知っているほうだと自負している。
ある寒い冬の日、遠方にあるはじめての取引先に工業機械を納めにいくべく、Kさんは会社のクルマを若い部下に運転させて高速道路を進んでいた。と、午前11時すぎ、半分くらい進んだあたりでガソリンのエンプティサインが点灯していることに気付いた。
部下「さっきからエンプティサインが点灯してるんで、2㎞ほど先にサービスエリアがあるから、そこで給油しますね」
Kさん「うーん、いや、もう一つ先のサービスエリアまで走ろう。そしたらそこで昼飯も食えるし、ちょうどいい」
部下「ええ、大丈夫ですか? ガス欠で止まっちゃいますよ」
Kさん「大丈夫、大丈夫。クルマはエンプティサインがでたあとも50~60㎞は走るんだよ。それにサービスエリアもそれを前提にだいたい50㎞間隔で設置されている。問題ないよ」
部下「あ、そうなんですか。わかりました」
一つ目のサービスエリアをやりすごし、二つ目のサービスエリアをめざした二人。しかし、走れど走れどサービスエリアのサインはでてこない。40㎞を超えてもでてこなかった。
Kさん「おかしいな……」
部下「おかしいですね……。あれ、ナビにはあと60㎞先にサービスエリアってでてますよ」
Kさん「な、なにー!」
気づくのが遅すぎた。
このあと数㎞走りつづけたが、本線上でガス欠となり、ついにエンジンがストップしてしまった。
惰性で路肩に寄せられたので、なんとか後方車に追突されずに済んだものの、万事休すだった。
止まったクルマのなかで二人はしばしボー然。
部下「Kさん、どうしましょう?」
Kさん「どうしましょうって、出発前にガソリンチェックしてなかったお前のせいだぞ! どうすんだ、お客さんとの約束の時間に間に合わないぞ。早く遅れるって電話しとけ!」
Kさん、上司風吹かすより、お客さんへの電話を急ぐより、ほかに即刻やるべきことがあるんだけど……。
日本全国に61もある
100~150㎞超のGS空白区間
Kさん、いろいろまちがいだらけです。
出発前にガソリン点検を怠ったことはもちろん、それ以外にも三つの認識ならびに行動に大きな誤りがありました。
一つは、エンプティサイン後の走行距離についての認識の誤り。
一つは、給油所があるサービスエリアの間隔についての認識の誤り。
一つは、路肩に止めたあとの行動の誤り。
まず、エンプティサイン後の走行距離の認識の誤り。
たしかに一般的にはエンプティサイン後もクルマは最低50㎞ぐらいは走るといわれています(なかには100㎞以上走るクルマもあるみたいです)。
しかし、それは車種や年式、季節(エアコン仕様の有無)、乗員数、積載している荷物の重量などによって大きく変動するわけで、絶対に50㎞走るとは限りません。
実際、Kさんたちが乗っているワゴン車は、旧式で燃費が悪かったためか、エアコンをガンガンつけていたためか、積んでいる機械が重かったためか、よくわかりませんが、50㎞までは走りませんでした。
つぎに、給油所があるサービスエリアの間隔についての認識の誤り。
サービスエリアをはじめとしたガソリンスタンドがあるところが約50㎞間隔で設置されているというのは、目安としてはある程度当たっていますが、そうではないところも少なからずあるので、正しい認識とはいえません。
国土交通省の調べによると、2016年4月時点で、高速道路で100㎞~150㎞以上にわたりガソリンスタンドがない区間が全国で61もあるとのこと。
現在、国土交通省と高速道路会社がタッグを組み、2017年度までに16ある150㎞超のガソリンスタンド空白区間をゼロにするという取り組みがなされていますが、それでも長い距離を走ってもガソリンスタンドがない高速道路の区間はけっこうな数にのぼっているのです。
Kさんたちは、その一つの区間でガス欠してしまったということです。
Kさんに限らず、運転歴の長い人のなかには、世間のウワサに基づいたクルマ事情、交通事情を鵜呑みにしている人がけっこういます。
でも、そうしたウワサはまちがっていることがほとんど。それで事情通を気取り、危機に陥るなんて悲しすぎます。気をつけましょう。
さてさて、それよりも問題なのは、三つ目の路肩に止めたあとの行動の誤りです。
止まったクルマのなかでしばしボー然とし、お客さんへの電話を優先するなんて危険極まりありません。
ほかに即刻やるべきことがあります。
次回、後編では、高速道路の路肩に止めたあと、乗員はどう行動すべきかについてお話しします。
高速道路上でガス欠。オーマイゴッド!〈前編〉
高速道路上でガス欠。オーマイゴッド!〈後編〉
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