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クルマのトラブル「もしも」マニュアル

Vol.5 車道で自転車に接触しちゃった。どんな場合もクルマ側の過失が大きいの?

2023年9月19日更新

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今回のやっちゃったストーリー

Eさん(50歳男性・会社員)は運転歴30年。
これまで壁をこする小さな自損事故を起こすことはあったし、駐車違反やちょっとしたスピード違反でキップを切られることもあった。だけど、人やクルマと接触するような事故を起こしたことはなく、重大な違反を犯したことも一度としてなかった。そのため、「自分はセーフティドライバー」という誇りに近い意識をもつまでになっていた。

しかし、ある日、その誇りに近い意識はガラガラと音を立てて崩れ落ちることとなった。

事故は、休日に近所のDIYショップまで家庭用菜園の土を買いにでかける途中で起きた。車道の左側の端を走っていたロードタイプの自転車が駐車中のクルマを避けようとし、進路変更の合図もせず、急にEさんのクルマの走行ラインにまで大きくふくらんできた。Eさんは、「わ、あぶない」と急ブレーキをかけたが、まにあわず、自転車の後輪とクルマのバンパーがわずかながらも接触する事態となってしまった。

自転車は転倒するかと思いきや、なんとか持ちこたえた。幸い自転車を漕いでいた人にケガはない様子だった。

Eさん、クルマを降りて自転車のほうに駆け寄った。そしたら、自転車の精悍な若者が顔を引きつらせながらこういってきた。「おい、どうすんだよ。後輪がひん曲がっちゃったじゃないか。これ50万円する自転車なんだよ。おっさん、ちゃんと弁償しろよな」

それを聞いてEさん、瞬時に血圧があがった。でも、「人や自転車との事故では、たとえ相手が交通違反していたとしてもクルマが悪いことになるはず……。この若者のいうとおり保険で弁償しなきゃいけないんだろうな」と思い至り、反論できず、シュンとなった。同時にこれまでのセーフティドライバーとしてのキャリアが一瞬にして白紙になったことに、いうにいわれぬ寂しさを覚えた。

とりあえずEさんは警察と保険会社に連絡。薄くなった頭髪をしきりに掻き毟り、悶々としながら、事故処理が終わるのを待ったのだった。

もう自転車は交通弱者ではない?

なんとも、災難でした。お互いにケガがなかったことだけは、不幸中の幸いといったところでしょうか。

ただ、それはそれとして、Eさん、これまで相手がいる交通事故を起こしたことがなかったためか、交通事故においては様々なパターンごとに過失割合があるということに思いが至っていないようです。

現場で心のなかで独りごちた「人や自転車との事故では、たとえ相手が交通違反していたとしてもクルマが悪いことになるはず……。この若者のいうとおり保険で弁償しなきゃいけないんだろうな」というセリフ、これは一概には言えないのです。

たしかに自転車は、クルマに対して交通弱者ととらえられる場合があります。

ただし、基本的に自転車は、クルマと同等に交通上の責任をもつ乗り物(軽車両)と考えるべきであり、事故時には、そのときの通行状況によって過失割合が課せられます。場合によってですが、自転車対クルマの事故において、自転車側の過失が大きく問われることもあるのです。

では、前述のストーリーのケース(停車車両など障害物を避けるために進路変更する自転車と後続のクルマの事故)では、どうなるのでしょうか?

この場合は、クルマ側10%、自転車側90%の過失割合になるのが基本です。これは、クルマ側からも停車車両があることは確認できるので、自転車が停車車両をよけるために進路変更することを予測できるはずである……とみなされ、それに対して対処(危険回避)しなかったクルマ側の過失は大きいとみなされるからです。

ただし、自転車は「進路変更の合図もせず、急にEさんのクルマの走行ラインにまで大きくふくらんできた」という事実があるので、それは考慮され、過失割合はクルマ側20%、自転車側80%くらいになると思われます(あくまで想定であり、必ずそうなるわけではありません)。

結果からいえば、Eさんの過失が大きいということになるのですが、相手にまったく非がなかったというわけではないということです。

過失割合は判例タイムズ(判例集)を元に決められる

そもそも保険会社は、毎年出される事故の裁判の判例集「判例タイムズ」をもとにして過失割合を決めていきます。つまり、過失割合とは、常に不動のものではなくて、世間の一般常識を汲みながら変動していくものとなっているのです。

まあ、でも、一般ドライバーとしては、過失割合の変化を常に気にするというのはなかなか難しい話です。まずは、もしものときのために保険の手当てをしておくことです。そうすれば、もろもろの判断は保険会社や弁護士に任せることができます。そして、突然起こる道路上の変化に常に気を配り、事故を起こさないように安全運転を実践することです。これこそは不動のコモンセンスと言えるでしょう。

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