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「トラック隊列走行実証実験」ルポ~トラックの自動運転はなにをもたらすのか?(後編)

2018年7月5日更新

トラック隊列走行_6_web

「未来投資戦略2017」に基づいた
今回のトラック隊列走行実証実験

最近、国の自動運転の実現に向けた実験が公道上で盛んに行われるようになっている。
今回のトラック隊列走行実証実験は、その代表的なもののひとつといえるだろう。

それにしても、国がこれほどまでに自動運転化に積極的なのは、どうしてなのか?

ここに一つの資料がある。
タイトルは「未来投資戦略2017 -Society5.0の実現に向けた改革」。2017年6月9日に閣議決定された今後の政府施策の概要だ。

その前文に、こんなことが書かれている(一部抜粋)。

〈経済の好循環は着実に拡大している。しかし、民間の動きはいまだ力強さを欠いている。これは、①供給面では、長期にわたる生産性の伸び悩み、②需要面では、新たな需要創出の欠如に起因している。先進国に共通する「長期停滞」である〉

〈この長期停滞を打破し、中長期的な成長を実現していく鍵は、近年急激に起きている第4次産業革命(IoT、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボット、シェアリングエコノミー等)のイノベーションを、あらゆる産業や社会生活に採り入れることにより、様々な社会課題を解決する「Society5.0(①狩猟社会、②農耕社会、③工業社会、④情報社会につづく、人類史上5番目の新しい社会のこと。新しい価値やサービスが次々と創出され、社会の主体たる人々に豊かさをもたらしていくことになる)」を実現することにある〉

〈第4次産業革命の進展により、(中略)この間までは遠い将来の夢と思っていたことが、頑張れば手に届きそうなところまで来ている中、Society5.0への挑戦をいよいよ本格化する時期である〉

非常に威勢がいい文面である。
その後の具体的な施策について述べる文章も熱く書かれており、この戦略的な考え方を実現するものの一つとして無人自動走行、すなわち「移動革命の実現」の必要性が説かれている。そして、今回の「トラック隊列走行実証実験」と将来的な事業化は、その先鞭として挙げられている。
〈ヒト・モノの移動について、無人走行、小型無人機(ドローン)による荷物配送や自動運航船等により、「移動革命」による物流効率化と移動サービスの高度化が進み、交通事故の減少、地域の人で不足や移動弱者の解消につながっている。2020年に国内販売新車乗用車の90%以上に自動ブレーキが搭載され、無人自動走行の普及に向けた社会の受容性が高まりつつある〉

〈無人自動走行による移動サービスを2020年に実現することを目指し、本年度から、地域における公道実証を全国10ヵ所以上で実施する〉

〈これら車両内に運転者がいない、事業化を目指した自動走行の公道実証が可能となるよう、隊列走行に関する電子牽引の要件や車間距離に関連した事項の検討、無人自動走行による移動サービスに関する専用空間の要件など、必要な整備等を行う〉

トラック隊列走行_7_web

つまり、まとめると、こうなる。

①日本の長期停滞を打破するには、IoT、人工知能(AI)、シェアリングエコノミーなどのイノベーションを、積極的に産業や社会生活に採り入れていくことが重要である。
②たとえば、自動運転の実現(「トラック隊列走行」)もそのひとつに挙げられる。
③それ故、国はそうした車両の走行実験を積極的に実施するとともに、規制緩和やインフラ整備なども前向きに行っていく。
③数年後、自動運転(トラック隊列走行)が事業化した暁には、日本はより活性化していくことになる。

どうやら国は、今回の「トラック隊列走行実証実験」をはじめとする自動運転化の試みを、日本活性化のために、本腰を入れて取り組んでいるということなのである。

いい自動運転社会の到来のために
一般ドライバーの協調も必要

実験における実際の高速道路上での隊列走行を目にして感動し、その背景もわかったとなれば、こうした国の試みについて、両手を挙げて大賛成の意を表明すべきであろう。「がんばれ、ニッポン! 」と。

ただ、冷静になって考えれば、コトはそう単純に歓迎一色になってはならないようにも思える。いくつか懸念されることがなくもないからだ。

たとえば、現在、同時に進められているITS(高度道路交通システム)と、今回の実験が、いったいどう繋がっているのか。同時並行的に実験や研究が進み、いつか合体するということなのだろうか? どちらも中途半端にならないことを祈るばかりである。

また、2022年にトラック隊列走行システムを商業化するというロードマップは、あまりに急いている感じがする。あとたった4年しかない。日本活性化という大命題を推し進めようとする余り、机上の論になってはいないのだろうか? 現実が(無理なく)ついていけるのか、不安を感じるのはわれわれ取材班だけだろうか。

ちなみに、ほんの少し前、国がは「水素化社会をめざすべきだ」と積極的に動いていた。そのなかで燃料電池自動車(FCV)の開発と販売には、強烈なスポットライトが当たっていた。ところが、意に反して(?)、世界的に電気自動車(EV)へのシフトが強まると、いつの間にかFCV礼賛は萎んでいるように感じる。しかも、チカラを入れるはずだった国の水素ステーション設置も、現状ではそれほど進んではいない……。
燃料電池自動車(FCV)の行方はどうなるのか、多くの一般ドライバーはわからないだろう。一般ドライバーを含む交通社会全体で、(もっとオープンに)育てていく姿勢であれば、ちがう展開になっていたのではないだろうか?

いま、世界中の人がつながっているこの社会では、縦割り的あるいは上意下達的な動きだけでは物事はちゃんと進まないということなのかもしれない。今回の実験を含め、自動運転化については、メーカーそして一般ドライバーのリアルな意思や意見の反映も必要だ。国だけではイノベーションは実現しない。CACCじゃないが、それこそ“協調”だろう。
今回の実験においては、周りを走る一般ドライバーの受容性もしっかりと調査するというから、とりあえずは、そのあたりからの巻き込みを期待したい。



さてさて、自動運転化の明日はどっちだ?
(文:みらいのくるま取材班)

トラックの自動運転はなにをもたらすのか?(前編)

トラックの自動運転はなにをもたらすのか?(後編)

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