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みらいのくるまの「ただいまのところ」情報
2017年10月6日更新
メイン執筆者は自動車ジャーナリストの清水和夫氏。自動運転のあらましが学べるまじめな一冊なのだが、氏の素朴なギモンをベースにした対談がかなり面白くて刺激的!
自動運転の全体像がつかめる一冊
この本は雑誌『Motor Fan illustrated』の別冊。いわゆるムック本として出版されたものだ。
内閣府の『戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の自動走行システム推進委員会』の委員を務める自動車ジャーナリスト清水和夫氏がメイン執筆者となって、基礎知識から今後のビジョンに至るまで、あらゆる角度から自動運転(もしくは自動運転車)に関する解説が試みられている。
じつは、どの記事も語調が固く、少々読みづらいところがある。だが、多くの写真と図版が理解を助けてくれるし、載っている情報の最新性と網羅性はかなりのもの。そのため、話題のAI(人工知能)が自動運転においてどんな役割を果たすのかも、ざっくりながらすんなり頭に入ってくる。そういう意味で、現時点における自動運転のあらましを学ぶには最適の一冊といってよいのではないだろうか。
「自動運転は簡単ではない」が通底
この本の面白味といえば、やはりメイン執筆者である清水和夫氏が執筆もしくは登場している記事だろう。
20年近くも私はポルシェやNSXのようなスポーツカーのインストラクターを務めてきたが、ハイスピードになるほど情報収集と状況判断が大切になってくる。秒速50m(200㎞/h近い速度)のスピードでは10分の1秒という短い時間で認知判断操作を繰り返し、的確な状況判断を下す。この状況判断で運転の上手下手が決まっている。このアルゴリズムをコンピュータに置き換えるわけだから、自動運転は簡単ではないだろう。
清水 世間が自動運転に期待しすぎていると?
河合 はい。非常に可能性のある、素晴らしい技術だと思いますが、一般の方々が考えているのと実際の技術進化、普及の時間軸にズレがあると思っています。(後略)
清水 (前略)IT業界の方と話をしていたのですが、彼らはAIを使った自動運転に対し非常に積極的ですよね。(後略)
河合 おっしゃる通り、IT業界と自動車業界の認識の違いも気になります。もしかしたら我々を含む自動車業界が旧態依然としていて動きが遅いのかもしれませんが、我々の感覚では、安全性を考えるとやはり慎重にならざるを得ません。これに対して、IT業界は失敗したら改良してやり直せばいいという感覚です。思うに、彼らは数千人を救うためにひとりふたりの犠牲が出るのはしかたないという考えに近いのではないでしょうか。(後略)
清水 人を処罰したり法人に罰金を課すというならわかるんですが、AIをどう処罰するんでしょうか?
今井 AIに責任を追及し、処罰するという考え方に抵抗があるのはわかっています。(中略)私の考えでは、事故を起こしたAIのプログラムを書き換えるなど、なんらかのかたちで修正するべきだと思います。最終的には人に対しても極刑があり得るように、AIも事故再発防止のための改良ができないと判断された場合には、破棄することも考えられるかもしれません。
しかし、清水氏は、この本においては、自身の体験や感覚を元にしてなるべく具体的に自動運転のことを語ろうと努めている。最終的には書かれていることが抽象的なところへ傾いたとしても、その姿勢があることでより知識と理解の足りていない読者は大いに救われる。ともに自動運転のことを一生懸命に考えてみようという気にさせてくれる。
雑誌スタイルなので、パラパラ捲って眺めるだけでも楽しい未来が感じられる。
(文:みらいのくるま取材班)
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